惜しまれつつ終了「新幹線の車内販売」ワゴン1台は「100万円超」で驚きの高性能を誇る逸品だった

国内 社会

  • ブックマーク

音楽が消えた理由

 JR東海が挙げた2つ目の理由、静粛な車内環境を求めるご意見については、言っておかねばならない点がある。

 この記述だとワゴンによる車内販売の担当者が声を張り上げて販売し、ワゴンもガチャガチャとけたたましい音を立てて通っているような印象を与えかねないが、全く違う。このような光景は筆者が2010年どころか、はるかに昔から見ることができなくなっていたからだ。

 東海道新幹線の車内販売の担当者は1980年代の終わりには無言で客室に入り、乗客が気づかない限り、ワゴンがやって来たことがわからないような状況であった。さすがにこれでは購入できないと苦情が寄せられたらしく、1990年代に入るとごく小さな音で音楽を鳴らしながら通るように改められている。しかし、これはこれで文句が出たらしい。音楽はいつしか消え、車内販売の担当者が小さな声を出して自らの存在を知らせるようになった。

騒音改善の歴史

 車内販売のワゴンがガチャガチャ音を立てるのも遠い昭和の一場面だと言ってよい。国鉄末期の1985年に東海道新幹線に登場した2階建て車両付きの100系という車両は、客室とデッキとの間の自動ドアの作動方法をそれまでのマット式のスイッチからセンサー式に改めた。車内販売のワゴンが客室に出入りする際にマットを踏んで生じる騒音がやかましいと評判が悪かったからだ。

 また、車両と車両との間の連結部分でも、開口部分に設けられていた段差をなくし、車両どうしを行き来しやすいように架け渡される「さん板」と「渡り板」との間の段差は残るものの、ワゴンが通ったときの騒音は格段に小さくなった。現在営業に用いられているN700系という車両は100系のさらなる改良版なので、ワゴンをよほど乱暴に扱わない限り、ほぼ無音だ。

 それでも車内販売の静粛性が問題視されるとなると、騒音は主に車内販売を利用する際に発せられる乗客の声だと言える。特に筆者のような耳が遠くなりかけた初老の男性は声が大きくなりがちなので、自戒を込めて注意しなければならない。

次ページ:「単なる台車」では全くない

前へ 1 2 3 4 次へ

[2/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。