惜しまれつつ終了「新幹線の車内販売」ワゴン1台は「100万円超」で驚きの高性能を誇る逸品だった
グリーン車でサービスは継続
東海道新幹線の「のぞみ」「ひかり」で行われていたワゴンによる車内販売が2023年10月31日限りで終了となった。終了を惜しむ声も聞かれるが、その理由はどういったものだったのか? 表向きの説明とは別に、背景には労働環境の過酷さが見え隠れする。鉄道ジャーナリストの梅原淳氏によるレポート。
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【写真を見る】「普段は見ることができない」車内販売準備室の内部
誤解のないように言いたいのは、車内販売自体は翌11月1日以降も続けられていることだ。ただし販売サービスは、16両編成で約1300人分の座席のうち、グリーン車200席の利用者限定の「東海道新幹線モバイルオーダーサービス」に縮小された。したがって、約85パーセントを占める普通車の利用者にとって、車内販売は事実上打ち切られたと言ってよい。
ワゴンによる車内販売の中止について、東海道新幹線の列車を運行するJR東海に理由を聞くと、大きく3つの理由を挙げていた。
1.駅周辺店舗の品揃えの充実、飲食の車内への持ち込みの増加
2.静粛な車内環境を求めるご意見
3.将来にわたる労働力不足への対応
車内販売の3分の1を占めるのは?
まず、駅周辺店舗の品揃えの充実、飲食の車内への持ち込みの増加についてJR東海に聞いてみると、車内販売の売上げが減っていることが分かった。
東海道新幹線の利用動向を示す旅客人キロ(乗客数×乗車した距離)は2008年度の460億人キロが2018年度には563億人キロと22パーセントも増加し、それに連動して、のぞみ停車駅の改札内店舗の売上が伸びているのに対し、同じ時期に車内販売の売り上げは半減しているという。
具体的な金額は公表しないそうなので車内販売の利用者数の増減は不明だ。したがって、車内販売の利用者数は同じなのに客単価が落ちたのか、それとも車内販売の利用者が大きく減って売り上げを減らしたのかどうかはわからない。
筆者が2010年秋に東海道新幹線で車内販売を担当していたジェイアール東海パッセンジャースサービス(以下JR-CPと略、現在のJR東海リテイリング・プラス)に取材したところ、ワゴンによる車内販売の売り上げ(金額非公表)のうちおよそ3分の1はホットコーヒーによるものだと聞いた。2010年当時のホットコーヒーの値段は税込み300円、現在は同じく税込み350円と値上げ幅が17パーセントに過ぎない。となると、半分もの売り上げが減った原因はやはり利用者の大幅な減少と見て間違いない。
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