韓国にまたも通貨危機の足音 「世界が羨む我が国の経済が…」日韓スワップは発動できるのか

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マユツバの経常黒字

――日本のように貿易収支ではなく、配当収入で外貨を稼げばいいのでは?

鈴置:韓国は20世紀の末に債務国から債権国に転換しました。ただ、海外資産からの配当など第1次所得収支は2022年で229億ドルに過ぎません。日本のそれは33兆3087億円(約2221億ドル)ですから、桁違いに少ない。

 注目すべきは韓国の経常黒字に粉飾の匂いが付きまとうことです。2023年8月の国際収支統計によると、今年1-8月の経常収支は109・8億ドルの黒字。うち、貿易収支(国際収支ベース)の黒字は60・3億ドルに過ぎません。160・9億ドルのサービス収支の赤字を、配当収支の黒字を含む第1次所得収支の238・8億ドルの黒字で補いました。

 この配当収支の黒字がやけに膨らんでいるのです。韓国政府は昨年秋、自国企業の海外現地法人が積極的に配当するよう誘導しました(「韓国に通貨危機の足音 ウォン急落に打つ手なく『地獄の釜』が開いた」参照)。

 韓国企業のドルを召し上げて外準を積み増す作戦です。2023年1-8月の配当所得の累計は190・2億ドル。昨年同期が50・4億ドルの黒字ですから、今年になって140億ドルほど「召し上げた」格好です。

 一方、今年8月までの経常収支の累積黒字は先ほど述べたように、109・8億ドルしかありません。民間からの「召し上げ分」がなければ、経常赤字に陥っていた可能性が高いのです。

――こんな小手先の誤魔化しをするなんて……。

鈴置:それだけ韓国の外貨繰りが際どい状況にあるということです。外準が目減りしようと、資本逃避を防ぐためにはウォンを買い支えるしかない。外準の減少を誤魔化すために、経常収支を黒字と見せかける――。経常黒字が続けば外準の増加が期待できますからね。

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