韓国にまたも通貨危機の足音 「世界が羨む我が国の経済が…」日韓スワップは発動できるのか

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 韓国で再び通貨危機への恐怖感が募る。米金利上昇、半導体不況、中国の成長鈍化、ポピュリズムの跋扈、少子高齢化……。四方八方から逆風が吹き付けてくるからだ。ウォンは買い支えているものの、外貨準備が減り、新たな不安要因となった。命綱の日韓通貨スワップも不発に終わる可能性があると韓国観察者の鈴置高史氏は読む。

「第2のIMF」呼ぶ政府の借金

鈴置:韓国で「来るべき通貨危機」が政争の具になっています。保守系紙、朝鮮日報の社説の見出し「国を借金漬けにした張本人が野党になったら『国家の不渡りを憂慮』」(10月21日、韓国語版)が象徴的です。ポイントを翻訳します。

・[野党第1党]「共に民主党」の院内代表が「このまま行けば我が国の経済は『第2のIMF』に陥る可能性もある」との見通しも語られるのに、政府は自画自賛するだけ」と語った。
・国会企画財政委員会の国政監査でも「共に民主党」のある議員が「全世界が羨むほど健全だった我が国の経済が、1年半もたたぬうちに総体的な国家不渡りの危機に直面している」と述べた。極度の家計、国家[政府]負債のために第2の通貨危機が起こり得るということだ。

「IMF」とは1997年の通貨危機を指します。当時、韓国は絶望的なドル不足に陥って経済が麻痺し、IMF(国際通貨基金)の管理下に置かれました。韓国人にとっては、日本による植民地化に次ぐ国辱の記憶です。

異様なスピードで債務が増加

――韓国の政府債務は通貨危機を引き起こすほど大きいのですか?

鈴置:IMFのデータ(2023年11月8日閲覧)によると、2023年の韓国の一般政府債務(D2基準)はGDP比54・27%。米国の123・28%や日本の255・24%と比べればはるかに低い。

 ただ、2018年の40・02%と比べると、5年間で14・25%ポイントも上昇しました。この異様に早いスピードでの債務増加が問題視され始めたのです。

 尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は予算規模の拡大に歯止めをかけようと必死です。が「行き足」は止まらず、5年後の2028年には57・93%まで上昇する見込みです。予算は既得権益化しがちで、ひとたび膨らますと容易には減らせません。

 2018年まで一般政府債務は40―41%で推移していました。文在寅(ムン・ジェイン)政権(2017年5月―2022年5月)になって急増したのは明白な事実です。そこで朝鮮日報の社説は「お前が言うな」と野党議員――文在寅時代の与党を叱りつけたのです。

・文在寅政権の5年間で政府負債が400兆ウォン増えて1000兆ウォンを超えた。政府樹立70年間で積み上げた借金の3分の2を5年間でひとつの政権が増やしたのだ。
・「カネをその辺に積んだままにしておくと腐る」といった詭弁を弄してポンポンと気前よくばらまき、GDP比で50%超える国の借金を作ったのである。

 新型コロナの流行で冷え込んだ経済をテコ入れした側面もあるので、「ポンポンと気前よくばらまき」との非難は言い過ぎかもしれません。ただ、事実を完全に歪曲し「尹錫悦政権の責任」と言いがかりをつけられれば、反撃に出ないわけにはいかないのでしょう。

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