38年ぶりの日本一で来年の阪神タイガースを占う【柴田勲のセブンアイズ】

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来年の阪神はどうなる

 ちなみに巨人のV9時代、MVPを長嶋(茂雄)さんが3回、堀内恒夫2回、森(祇晶)さん、高田繁、末次(利光)さん、そして私が1回獲得している。

 すでにお気付きだろうが、王(貞治)さんは1回ももらっていない。相手チームのマークが徹底していたこともあったが、日本シリーズのような短期決戦では「ラッキーボーイ」、味方の勝利を呼び寄せる、ついている選手が出現するケースがよくあるのだ。長嶋さんの場合は大舞台になればなるほど燃える。気迫もすごいものがあった。

 近本のMVPから話が少しそれてしまった。日本一の阪神、今季の戦いぶりを見ていると来年以降も強いような気がする。

 まず投手陣は盤石だし、野手陣にしても森下、佐藤輝明は今後も伸びそうだ。近本と中野拓夢の1、2番コンビは脅威だし、大山悠輔も4番の座をしっかり守っている。坂本誠志郎もいい働きをした。来年につながる。

 でもねえ……「来年のことを言うと鬼が笑う」なんてことわざもある。ヤクルトにしても昨年リーグ優勝したのに、今年はBクラスの5位に転落した。こればかりはどうなるか分からない。

 だが阪神は前述したように投手陣が充実している。いきなりBクラスなんて極端なことはないのではと思う。

阿部新監督に期待

 阪神対オリックスの日本シリーズは「関西ダービー」と呼ばれて、大阪を中心に関西地方が大いに盛り上がった。その分、関東では盛り上がりに欠けたような気がする。

 やはり巨人には日本シリーズに出場してほしい。なんやかんやいっても巨人は全国にファンを持つ人気球団だ。全国的に盛り上がる。巨人が出ないのは寂しい。

 その巨人は阿部慎之助新監督の指揮のもと宮崎で秋季キャンプを張っている。阿部も動いた。アダム・ウォーカー外野手とソフトバンクの高橋礼投手、泉圭輔投手の交換トレードが決まった。

 長打力の魅力は捨てがたいものがあり、私は買っていた。でも、今季、巨人のリリーフ陣の防御率は3.81で2年連続リーグワーストだった。救援投手の補強が課題だった。

 巨人は秋広優人の成長があるし、ウォーカーにしてもソフトバンクならDHで活躍の場が広がる。後で振り返って、いいトレードになったと評価されることを願う。

(注1)05年のロッテ対阪神は第4戦で決着し、ロッテ・今江敏晃が15打数10安打で打率6割6分7厘をマークしたが、それ以前の日本シリーズ記録だった。

(注2)この試合の前までに日本シリーズで行われた97試合のうち75試合で先制点を挙げたチームが勝っていた。この裏に同点とされたが最後は3対2で巨人が勝利、柴田氏の先制のバントヒットは過去のデータを裏付けた。

柴田 勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会理事を務める。

デイリー新潮編集部

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