38年ぶりの日本一で来年の阪神タイガースを占う【柴田勲のセブンアイズ】

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今年は阪神の年だった

 岡田彰布監督率いる阪神が1985年以来、38年ぶりの日本一に輝いた。3年連続で日本シリーズに進出した昨年の覇者・オリックスから日本一を奪い返した。

 まずは岡田監督に「おめでとう」と祝福の言葉を贈りたい。今年はペナントからクライマックス・シリーズ、そして日本シリーズと阪神の年だった。

 第6戦を山本由伸投手の好投の前に3勝3敗とタイにされた時はオリックスが有利かなと思った。追う者は強い。

 でも第7戦では今年の阪神の強さを物語る試合となった。4回にシェルドン・ノイジーの左翼席への3ランで先制、宮城大弥の低めのチェンジアップだった。難しい球でまさに技ありの一打だった。5回にも森下翔太のタイムリーなど5安打で3点を挙げてリードを広げた。

 開幕投手だった青柳晃洋が5回途中無失点で降板したがゲームを作り、島本浩也、伊藤将司、桐敷拓馬らがしっかりとつないだ。

 最後は岩崎優が一発を浴びたが、この登板は岡田監督が今シーズン抑えとして頑張ってきた岩崎に対する配慮だろう。岡田監督らしい起用だったと思う。

バントの思い出

 MVP(最優秀選手)には1番打者・近本光司が選ばれた。近本にも「おめでとう」と声を掛けたい。

 私はシリーズ前、阪神のキーマンにこの近本を挙げた。CS最終ステージでは11打数1安打で少し心配していたが、シリーズでは見事に復調した。

 シリーズ通算14安打、打率4割8分3厘だった。第7戦でも1試合4安打を放っており、阪神では62年の吉田義男さん以来2人目の記録だそうだ(歴代最多タイ、史上24人目)。さすが今年1年間、岡田野球をけん引してきた1番打者だ。

 私もMVPをもらったことがある。プロ5年目の66年、V2の年だ。南海(現ソフトバンク)が相手で6試合23打数13安打、打率は5割6分5厘、7打点の成績(注1)だった。

 いまでもよく覚えているのは第3戦(大阪球場)、ともに無得点の5回表2死三塁で迎えた打席だ。マウンドには渡辺泰輔投手が立っていた。

 左打席で1球目から思い切り振って空振りかファウルなら次はバントと決めていた。狙い通り、意表を突いて2球目を一塁ケント・ハドリと二塁ジャック・ブルームの間に転がした。ブルームが慌てて捕球、一塁に送球したが私の足が優った。三塁から柳田利夫さんが先制の本塁を踏んだ。(注2)

 南海は渡辺さん頼みで3連投を含む4試合に先発した。私は渡辺さんに対して7打数7安打2四球で10割だった。

 南海の鶴岡一人監督が「うまいバントにやられた」と言ってくださった。こんなこともあってよく覚えている。

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