巨人V9から半世紀 当時の主力・柴田勲が語る「年俸の裏側」と「伝説のサヨナラ3ラン」
いまも頭に浮かぶホームランは…
データを逆手に取り、その先を行った巨人と、データに縛られた阪急の差が浮かび上がってくる。
「あれ、走っていたから三塁まで行けたんですよ」
柴田が言う。ゲームセットのはずが、2死一、三塁とピンチが広がった。そして、王の3ランが生まれる。
柴田は、劇的で美しいホームラン・アーチを三塁走者の位置から見つめた。
「僕自身、200本近く(194本)打っているし、たくさんのホームランを見てきたけど、いまも頭に浮かぶのは2本だけ。僕が初めて打ったライトへのホームランと、この時の王さんのホームランです。
やった、勝った! ものすごく興奮して三塁からホームに走りましたが、その時、マウンドにうずくまって動かない山田の姿が目に入った。なんだか山田がかわいそうになってしまって、複雑な思いが胸をよぎりました。僕も投手の経験があるから。投手というのは残酷なポジションだとつくづく感じました」
「5番柴田」で苦しんだ3年間は柴田には暗黒の日々だった。しかし、値千金の四球を得た要因が、5番柴田の26本塁打に象徴される長距離打者のイメージだとすれば、それはかけがえのない布石だったと認めるべきだろう。(敬称略)
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