“大英博物館”から相談も…「まんだらけ」古川益蔵会長に聞く、国主導の“マンガ原画保存” 「日本人は海外で評価されないと価値が分からない」
巨匠の死後、原画はどうなる
――古川会長の真贋鑑定への強い思いを感じます。
古川:鑑定は、うちの会社の中でも根幹にかかわる重要な部署です。国や文化庁も本気で原画やセル画の保存に取り組むなら、真贋鑑定の部署を作るべきでしょう。鑑賞に堪えうるものを集めるとなれば、作品を評価し、鑑定ができる学芸員が在籍する必要がある。しかし、当社も失敗を繰り返して学んできたのでわかりますが、人材を育てるのは簡単ではないと思います。
――今から教育するにしても、年月がかかりそうですね。
古川:国がうちを買収して、一つの部門として使えば解決するんじゃないですか(笑)。そうしてくれたら僕は引退できますが、偽物も進化しているのでなかなかそれができない。当社は鑑定ができる社員が増えてきましたが、データベースにない、品物の手触りとか全体のバランスといった感覚の部分を教えるのが難しいですね。偽物が氾濫している今は、データと感覚の両方を大事にすべきだと強く思います。
――課題は山積していますね。そして、令和に入って数多くの漫画家が逝去し、原画の散逸が危惧されています。
古川:僕としては、当社に売ってくださるとありがたいのですが(笑)、博物館などは買い上げるとしても大変でしょう。松本零士さんの原稿なんて、先月のオークションで1枚数十万、なかには数百万になったものもあります。これを時価ベースで買い取ったらとんでもない金額になりますよ。だから、無償で寄贈してもらう以外にはありません。ただ、漫画家の原稿は段ボールで何十箱、大御所だと何百箱になりますから、保管する場所の確保は難しい問題ですよね。
――セル画などは既に散逸が進み、アニメスタジオにもないケースも多いと聞きます。
古川:頑張って集めて欲しいけれど、もう時期を逸していると思う。いいものはだいぶ海外に流れてしまっているし、値段が安い時(注:現在は数百万で落札されるスタジオジブリのセル画が、20~30年ほど前はまんだらけでわずか数万円、数千円で購入できた)にもっと早く取り組むべきだったと思いますね。
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