“大英博物館”から相談も…「まんだらけ」古川益蔵会長に聞く、国主導の“マンガ原画保存” 「日本人は海外で評価されないと価値が分からない」
原画をどのように鑑定するのか
――価格が高騰すると出現するのが偽物です。ネットオークションやフリマサイトでは、手塚治虫先生の色紙の偽物が依然として出品されています。
古川:偽物はものすごく出ていますし、当社にも毎日のように持ち込まれます。真贋鑑定の依頼もありますし、買い取ったものも改めて確認するなどして、毎日5~6人が鑑定に当たっています。僕も毎日鑑定していますし、土・日は最低でも2時間は見ていますが、対応が追い付かないくらい。最近の偽物は、プロの漫画家やアニメーターが作っているものもあります。僕はほとんどの場合は見分けがつくけれど、一般の方はまずわからない精巧なものが増えていますね。
――日本画や洋画だと、遺族や財団法人が鑑定を行っているケースがあります。対して漫画の原画やセル画はそうした組織がないですよね。まんだらけが鑑定できるのは、どうしてなのでしょうか。
古川:取り扱ってきた量が違うからです。当社はこれまで買い取り、販売した原画や色紙から、絵やサインだけでなく、本人が書いた「あいうえお」などの筆跡から数字までピックアップした膨大なデータベースを持っていますからね。
――そんなまんだらけでも、鑑定ミスをすることはあるのでしょうか。
古川:ありますよ。当社でもずいぶん、手塚さんの色紙など、偽物とわかった品物の代金を返却しました(注:まんだらけでは、原画に関して、後で偽物だったと判明した場合は商品代金を全額返却するという保証書を発行している)。こうした間違いから学び、データの精度を上げる努力をしてきました。とにかく、間違ったら大損ですから、鑑定を絶対的なものにすることは、お客さんからの信頼を得るためにも欠かせません。
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