“大英博物館”から相談も…「まんだらけ」古川益蔵会長に聞く、国主導の“マンガ原画保存” 「日本人は海外で評価されないと価値が分からない」

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なぜ原画を蒐集するコレクターがいるのか

――私も手塚治虫先生を筆頭に、多くの漫画家の色紙や原画を蒐集していますが、古川会長が考える原画の魅力はどんなところにあるのでしょうか。

古川:それは、あなたが一番よくわかっているんじゃないの(笑)。コレクターにとっては、ピカソやゴッホの絵を持っている感覚に近いでしょう。印刷された単行本や量産されたグッズと違い、自分が好きな漫画家の一点ものを自分の宝物にできるわけじゃないですか。そんなの、ファンにとっては感激以外の何物でもないですよね。

――おっしゃるとおりですね(笑)。そもそもなぜ、古川会長は原画や色紙が売り物になると思ったのでしょうか。

古川:売り物になるというよりも、僕は第一に“価値がある”と思っている。そして、価値があると証明するためには、値段をつけなければいけないのです。売買しなければ値段はつきませんし、誰も価値があるなんて理解できません。

――価値が理解されなかったせいで、以前は原画が捨てられてしまうケースもたくさんあったそうですね。

古川:僕は一貫して、原画は守ったほうがいいと考えています。しかし、かつては出版社が編集部を訪れた読者にプレゼントしたり、倉庫がいっぱいになったら勝手に処分したりと、扱いがぞんざいだったのです。今では信じられない話ですが、昔は漫画家だって出版物には関心があっても、原画には興味がない人の方が多かったんですよ。手塚さんだって原画を読者にあげたりしていましたからね。漫画家の意識が変わったのは近年のこと。値段がつくようになってから、価値があると考える人が増え始めたとみています。

――対して、漫画のマニアやコレクターはいつ頃から価値を見出していたのでしょうか。

古川:はっきりとはわかりませんが、当社の場合、1980年代に店を始めた頃から、お客さんに「原画が欲しい」と言われ、扱うようになったのです。だから、マニアの方は凄いですよ。漫画家や出版社より先に価値に気づいたんですからね。ところが、大多数の日本人は漫画やアニメが身近にありすぎるから、その大切さや凄さがわからないのでしょうね。

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