レスに悩み、不倫に走った47歳夫は大きな勘違いをしているのか どうしても気になる妻の一言と元カレの呪縛

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初恋の相手と重ねた逢瀬

 彼自身、相当落ち込んだらしいが、コロナ禍直前に、SNSで中学時代の同級生と再会した。その人は彼の初恋の相手、真美さんだった。ネット上でやりとりするうち、彼女が「今度、東京に行くからランチでもどう?」と送ってきた。

「ふたつ返事でOKしました。初恋の人に会うのは少し怖かったけど、20年以上たった彼女を見てみたい気もしたし、なにより懐かしかった」

 妻とは相変わらずだった。日常生活は滞りなく過ぎていたし、子どもを介して話もする。だがお互いの心に触れるような言葉のやりとりはなくなっていた。夜も部屋が別になった。ある日突然、「パパ、ごめんね。私、冷房で冷えちゃって体調がおかしいから、あっちで寝るね」とうまい言い訳を作って妻は寝室を別にしたのだ。冬になっても妻は寝室へ戻ってこなかった。それでも彼は、家族として妻に接していた。

「真美に会ったとき、鬱々としていた心がパッと晴れたような気がしました。真美は明るくて笑顔のかわいい子だったけど、笑顔が変わってなかった。一気にふたりとも中学生に戻ったような感じでした。その日はランチに2時間かかってしまいました」

 彼女は仕事でときどき上京するからまた会おうねと帰っていった。そして1ヶ月後にはまたやってきた。暗黙の了解のようにふたりは体を重ねた。そして彼が初恋の人だと思っていたように、彼女もまた彼を初恋の人だと思っていたと知った。

「彼女は独身でした。婚約したことはあるけど結局、結婚には至らなかったそうです。『今も結婚したくないとはいわないけど、しなくてもいいとは思ってる』とサバサバしていました。1、2ヶ月に1度の逢瀬は、いつも燃えましたね。彼女は非常に性に積極的だったし、セックスが楽しくていいものだと初めて思えた。僕が悪いわけじゃないかもしれない、やはり妻が前の男と……とも感じたけど、もう蒸し返したくなかった」

晃大さんの認識は違うのではないか

 ところが真美さんと関係が深くなればなるほど、晃大さんの心のなかで妻の存在が大きくなっていった。やはり妻とこういう関係をもちたい、妻としたい。その思いが拭えなかった。

「真美に失礼だと思いながらも、妻が性的にこのくらい熟していたらと思うこともありました」

 話を聞きながら、晃大さんの認識は違うのではないかと思い始めた。もしかしたら妻の千紘さんは、もっと奔放な行為をしたり、いわゆるアブノーマルと言われる世界に入ったりしていたのではないだろうかと。「とんでもなく感じたことがある」からこそ、一般的なセックスでは物足りなくなっているのではないか。感じない自分に焦り、夫との性がつまらなくなったのではないか。

 結婚前や新婚当時の妻のことを思い出してもらった。そういえばと彼は遠くへ目を泳がせた。

「一度だけ妻があの最中に『ぶって』と叫んだような気がしたことがあるんです。あとで確認したら、そんなことは言ってないときっぱり言うので聞き間違いかなとは思ったんですが、印象には残っています」

 彼は妻が「熟していない」と表現したが、実は熟しすぎた自分に夫は対応できないと見極めたのではないか。もちろん、それは単なる憶測に過ぎないから、晃大さんには言えなかった。

「今も真美との関係は続いています。ときどきしか会わないから、いつでも新鮮だし、心より体が優先される関係だとお互いにわかっている。それでも真美が来るとわかればうれしいし会いたいと思う。そして会うと、妻と“したい”と強く願う気持ちがわいてくる」

 ふうーっと異常に長いため息をついて彼はうつむいた。子どもたちは13歳と11歳になった。ふたりと話すのはとても楽しいし、子どもはかけがえのない存在だと彼は真摯に言った。

「だけど人生、子どもさえいればいいとも思えない。僕が今いちばん求めているのは妻とのセックスかもしれません」

 夫の不倫を知ったら千紘さんは怒るのだろうか。あるいは知らん顔を決め込むだろうか。

 わからないし、知りたくないと彼はまた、尾を引くような長いため息をついた。

前編【妻と交際するため当時の彼氏に100万円払った47歳夫の告白 「後ろめたさを感じながら結婚しようと…」】からのつづき

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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