レスに悩み、不倫に走った47歳夫は大きな勘違いをしているのか どうしても気になる妻の一言と元カレの呪縛

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「あなた“とは”」

 男性は、女性が思うより性的なことに神経質だ。妻に拒絶されて内心は傷ついても、そんなそぶりを見せるのは「沽券」にかかわると思っていたりする。だがパートナーに拒絶されて傷つかない人などいない。

「セックスを拒絶するということは、僕自身を拒絶しているということ。だけど日常的には普段通りの生活をしている。これが苦しいんです。僕のことが嫌いなら嫌いと言ってくれればいい。でも会話しているときは嫌われているわけではないと思える。夫として父親として認めてもらえている実感がある。それなのに、もしかしたらいちばんお互いの素が見える関係だけは拒否する。どうしてなんだと妻の肩を揺さぶりたくなりました」

 下の子が3歳になっても、その関係だけは復活しなかった。そしてそのころから妻はパートを始めた。ますます忙しそうになる妻を見ながら、彼は空虚さを子どもへの愛で埋めようとしたが、もちろんそれで満たされたわけではない。

「妻に対して怒りがあったわけじゃない。でもあるとき眠りかけた妻を黙って襲うような形になってしまった。僕としてはどうしてもひとつになりたかっただけ。でも妻は悲鳴を上げて大騒ぎしたあげく、『ダメなの、どうしてもダメ。あなたとは感じない』と叫んだんですよ。え、今、なんて言った? 感じない? そのとき、例の妻の彼だった男の顔を思い出した。あんなわけのわからない男とつきあっていたのは、体が満たされていたからなのではないかと急に腑に落ちたような気がして……。千紘を問い詰めました。『あの男が忘れられないのか、そんなによかったのか』って。妻は泣きながら『ごめんね、私が悪いの。子どもが生まれてから体も疲れているし、子どものことが気になってできないのよ』とあわてて言い訳した。でもはっきり言ったんですよ、あなた“とは”感じないって」

体の相性がすべてではないのに…

 あの男と会っているのか、と尋ねると、彼は死んだわと妻は言った。半年前に連絡があり、余命いくばくもないと知らされて、一度だけ病院で会ったが、その3ヶ月後に彼はこの世からいなくなった。100万円のことが苦々しく思い出された。

「彼とのセックスはよかったのと聞いても、彼女は答えなかった。おそらく僕の推測は当たっているんじゃないかと思います」

 前の男とのセックスがよかったからといって、今のパートナーのセックスを拒絶することがあるのだろうか。今のパートナーとの相性がよほど悪ければ拒否したくなるかもしれないが、それは前の男のほうがよかったからというわけでもないだろう。どんなに体の相性がよくても、それだけでは関係は長続きしない。長くつきあったり結婚したりするのは、それ以外の要素が大きいからだ。彼自身、結婚前に彼女と相性が悪いとは思っていなかったという。もちろん妻にも聞いてみなければわからない話ではある。

「妻がセックスそのものに興味や関心をなくしたならしかたがないと思えるけど、僕とは感じないなら、それは僕が悪いのか、前の男に固執しているかのどちらかでしょう。僕が悪いとは思いたくなかったけど、前の男に比べて下手だったと言われたも同然です」

 そこまで言われると慰める言葉も見つからない。

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