世界が憧れた「中銀カプセルタワービル」はまだ“取得可能” 取り外された「カプセル」の“意外な譲渡先”とは
スケルトンカプセルはすでに“ソールドアウト”
まずスケルトンについては、「企業とプロジェクトに計2基を引き渡し済みです。残りの5基については、黒川さんが50年前に考えていた『カプセルビレッジ構想』を踏襲しながら、形を変えて実現する話を進めていて、こちらに使うことになります。カプセルを並べ、宿泊も可能な施設にしたいと考えています。スケルトンの行き先は全て国内で決まりました。新たなお話は受けられない状態です」。なんと、スケルトンカプセルはすでに“ソールドアウト”になっていた。
オリジナル内装カプセルは「米国にもう一つ、ヨーロッパに一つ、アジアに一つ送ることが決まっています。残りについても交渉中です」。現在、中東の某国、オーストラリアなどの国から話が来ているというが、「海外については、輸送コストが1000万円以上かかることもあり、一度話がまとまってもキャンセルになることがこれまでもありました。オリジナル内装についてはまだ話をお受けできます」と、カプセルの譲渡を受けられる可能性は残っているという。
ではどうすればカプセルを受け取れるのか?
まず、先着順ではない。設置する場所、使用目的などを「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト」に伝え、同プロジェクトメンバーが厳正に審査した上で譲渡の可否を決める。審査をクリアできるだけのしっかりとしたプランが必要となる。
「大切に使ってくださる方にお渡しするだけです」
気になるのはカプセルの“お値段”だが、「基本、売買はしません。我々はあくまで預かっているだけですので、カプセルを永く、大切に使ってくださる方にお渡しするだけです」。カプセルそのものに“値段”はない。しかし、カプセルの運搬、修復、保管には多額の費用がかかっているため、「修復にかかった金額の一部のご負担をお願いしています。全額ではありません」。
これまでのカプセルの行き先を見ると、美術館・博物館、松竹の東劇ビルや銀座シックスに置かれるもののようなアート系、ヨドコウやカプセルビレッジのように黒川氏の描いていたカプセル構想の“文脈”に沿ったものが譲渡先になっている。
前田氏は「実はアート系の展示は、黒川さんの構想にはありませんでした。建築家でありアーティストであった黒川さんならきっと面白がってくれると考えお渡ししました。こちらが置きたいと思える場所や、すごく面白いプランを頂ければ、優先してお話をしたいと思います」と話す。
黒川氏は「メタボリズム運動」を提唱し、建築物に柔軟な可能性を持たせようとした。銀座8丁目のビルから解き放たれたカプセルは、黒川氏が思いもしなかった形も含め、新たな場所で氏の思想を伝え続けることになる。カプセルを受け取りたい企業、自治体、個人は、“柔軟なアイデア”と“確かなプラン”を手に保存・再生プロジェクトへ。まだ間に合う!