世界が憧れた「中銀カプセルタワービル」はまだ“取得可能” 取り外された「カプセル」の“意外な譲渡先”とは

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車輪をつけて“トレーラー”に

 この2基以外ですでに行き先が発表されているのは、淀川製鋼所、米・サンフランシスコ近代美術館(SFMOMA)、和歌山県立近代美術館・博物館に渡った3基と、東京・銀座の銀座シックスで11月10日から12月25日まで期間限定で展示されることが決まった1基。3基はオリジナル内装、銀座シックスで展示される1基はスケルトンカプセルだ。

「ヨドコウ」としても知られる淀川製鋼所は、カプセルに車輪をつけてトレーラー化し、自由に動けるようにした。前田氏によれば、これは設計者の黒川紀章氏が思い描いていた案の延長線上にあるという。

「黒川さんは週末などに所有者がカプセルをタワービルから取り外し、車で移動する、という構想を持っていたんです。実際にはビルから取り外すことは不可能でしたが、解体したことで50年越しに実現しました」

 サンフランシスコ近代美術館が取得したカプセルは、黒川氏が所有していたカプセル。すでに海を渡り、現地に届いている。

 和歌山県立近代美術館・博物館の現在の建物は、黒川氏が設計し、1994年に竣工。黒川氏がデザインした空間に、氏の初期の代表作が置かれることになった。1972年生まれのカプセルと、22年後の黒川氏設計建築が同時に見られる、建築ファンにとってはたまらない場所だ。

 銀座シックスに展示されるカプセルは、クリエイティブ集団YARが内装を手がけ、70年代と現在をミックスした音楽空間に生まれ変わる。銀座シックスでの展示が終わった後は、地方のギャラリーに収用され、その後については調整中。

 前田氏によれば「保存された23基のうち、9基がスケルトン、14基がオリジナルの内装に戻したものです。すべて黒川紀章建築都市設計事務所監修の下に修復されました」。すでに行き先が発表されているのは、スケルトン2基、オリジナル内装4基の計6基。では残りの7基のスケルトンカプセルと、10基のオリジナル内装カプセルの行方は?

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