カンボジアの“中国製”新空港が大不評 「遠すぎ」「飲食店が一軒もない」…「習近平」も来ない?

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中国からのアクションなし

 正式オープンは12月1日に予定されていたが、11月中旬に早まる可能性もある。カンボジアは今年の選挙で、フン・セン前首相の息子のフン・マネットが新首相になった。就任後、フン・マネットは中国を訪問している。その席で当然、シェムリアップの新空港のオープンセレモニーの話も出たはずだ。カンボジア側は、習近平を呼んでお披露目をしたかったようだが、話はまとまらなかったという噂も流れている。だったら自分たちで正式オープン……という筋立てだ。

 新空港の青写真では、空港近くにエアポートシティという名のチャイナシティ構想もあった。高級ホテルを中心にした中国人向けリゾートだという。空港周辺に工業団地のプランもあったようだ。しかし計画はすべて止まっているのか、中国側からなんのアクションもないという。

閉まったままの観光ホテル

 シェムリアップの観光業界は中国への依存度が高く、ツアー客に支えられてきた。コロナ禍が収束し、新空港が開港し、堰を切ったように中国人団体客が姿を見せることを期待していたが、そんな動きはまったく聞こえてこない。中国人団体客を受け入れる大型ホテルは、半分近くがまだ閉まったままだという。

「このままいったら私たちは沈んでしまう。しかし中国は怖いほど静か。なんの情報も入ってこない」

 と、Lさんは胸のうちを語る。

“空港観光”でにぎわい

 実はいま、シェムリアップ・アンコール国際空港は、飛行機に乗らないカンボジア人でかなりにぎわっている。農村地帯に住む人たちが新空港を、無料のテーマパークのような感覚で遊びにくるのだ。

 生まれてはじめて乗るエスカレーターでの写真は定番らしい。水洗トイレの使い方を知らない人も多く、トイレは水浸しになっているという。週末は空港観光客の車で渋滞が起きるほど。しかしその誰もが飛行機には乗らない。15ヵ所もある搭乗ゲート周辺は閑散としているという。

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)
1954(昭和29)年、長野県生れ。旅行作家。『12万円で世界を歩く』でデビュー。『ホテルバンコクにようこそ』『新・バンコク探検』『5万4千円でアジア大横断』『格安エアラインで世界一周』『愛蔵と泡盛酒場「山原船」物語』『世界最悪の鉄道旅行ユーラシア横断2万キロ』『沖縄の離島 路線バスの旅』『コロナ禍を旅する』など、アジアと旅に関する著書多数。『南の島の甲子園―八重山商工の夏』でミズノスポーツライター賞最優秀賞。近著に『僕はこんなふうに旅をしてきた』(朝日文庫)、『旅する桃源郷』(産業編集センター)。

デイリー新潮編集部

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