昨年のM-1王者「ウエストランド」はブレイクしたか 得意とする“毒舌芸”の難しさを指摘する声も
1年で賞味期限が切れる王者
10月21日に開かれた「キングオブコント2023」でサルゴリラが優勝した。これに3月に開催された「R-1グランプリ」(今年の優勝は田津原理音)と合わせ、「お笑いグランプリ3冠」と言われるのが、漫才日本一を決める「M-1グランプリ」(以下、M-1)である。
【写真を見る】漫才中に見ることは少ないが、ファンも「最高」と喜ぶ素敵な笑顔(井口浩之の公式インスタグラムより)
8月から第1回戦が始まっている今年のM-1は、史上最多の8540組がエントリーした。10月29日から3回戦が始まり、その後、準々決勝、準決勝、そして12月に行われる決勝へと続く。優勝すると、その直後から仕事が山のように入り、芸人としての「人生が変わる」といわれるM-1。今年はどんな新しい才能が勝ちあがってくるのか、興味津々ではあるのだが、
「M-1が漫才日本一決定戦であることは確かだと思いますが、ここ数年は優勝しても、次の大会が行われる1年後に新王者が出るタイミングで、前王者が賞味期限切れになる傾向があります」(ベテラン演芸担当記者)
M-1は第1回が行われた2001年から数えて、今年で19回目。大会としての新鮮味が薄れてしまったのか?
「M-1の“競技化”が顕著になったことが原因だと思います。漫才コンビというのは本来、いかなる場所でも客を即興で笑わせたり、フリートークでウケを取れたりする、いわゆる“ストリートファイト”的な強さが求められます。しかし、最近のM-1を目指す芸人の間では、M-1という“競技”に勝つための技術に走り過ぎているように思えるのです」(同)
アップテンポでネタを繰り出し、コミカルな動きにリアクションも欠かさないスピード感のあるネタもあれば、会話の途中で散りばめた伏線を、オチに向けて見事に回収していく技巧派ネタ。さらに、会場の雰囲気をも味方につけ、審査員も巻き込めば……漫才を軸に、テクニックを競うスポーツ。そんな傾向が顕著になっているという。
「結果として、本来の野試合的な“ケンカ”ができる漫才師が減り、M-1という試合できれいに勝ち抜いて優勝するコンビが出てきたため地力が劣り、その後も長期間にわたって実力を発揮し続けることが難しくなっているコンビが見受けられます。SNSの発達で、新しいキャラやお笑いタレントが次々と誕生し、視聴者やファンの消費サイクルが早まっていることも関係していると思います」(同)
ネット上では、歴代王者の中で「M-1後に売れたコンビ、売れなかったコンビ」を論評するものもある。一般に「売れない」と思われるのは、冠番組や全国放送のレギュラー番組を持たないことを指すようだ。しかし芸人の場合、テレビに出るだけが全てではない。ライブや地方での営業、イベント出演をこなして稼ぐ道もある。
では昨年のM-1で、出場エントリー7261組の頂点に立った、ウエストランドはどうか。
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