脳トレより有効な「推し活」「アロマ」 認知症予防に期待大の研究結果が

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海外では医師がアロマを処方

 実は、神経細胞の新生が起こる場所は海馬以外にもあります。大脳の前方に位置する「嗅球」という部位。香りを認知する部分も刺激できるわけです。日本でアロマセラピーは、ただ香りを楽しむことのようにイメージされていますが、ベルギーでは医療行為として保険が適用され、フランスでも医師が「メディカルアロマ」という内服薬として処方するのが一般的です。つまり、特定の症状の治療薬として用いられるほど生理反応が著しいということです。

 一例として、バラの香りは記憶力アップに有効で、就寝前にラベンダーを嗅ぐと安眠を得やすいといった効果があります。コーヒーの香りにも心を満たす効果があるとされており、実際に香りを嗅ぐことで13~17種類の遺伝子の発現量が変化したという研究もあります。ただし、使い方を誤ると逆効果です。目覚めをよくしようとした人が覚醒効果のあるレモンの香りを就寝前に嗅いで、かえって寝付けなくなったというケースもあります。

 食事の際にも、一つずつの食材の香りを楽しめばよい刺激が得られます。例えば高級な松前漬けの香りを楽しみながら、よくかんで食べればドーパミンも分泌されるので一石二鳥。またフルーツなどは、包丁で切った直後の香りを嗅ぐと、より効果的です。

 このように、日常的に香りを楽しむことで脳の活性化が促されていくわけです。

西 剛志
分子生物学者・脳科学者(工学博士)

週刊新潮 2023年11月2日号掲載

特集「齢を重ねても脳は若返る カギは『神経細胞の新生』 “脳のプロが実践”『老人脳』にならない“新生”法」より

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