脳トレより有効な「推し活」「アロマ」 認知症予防に期待大の研究結果が

ドクター新潮 ライフ

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幸福感が満腹感につながる

 人間の記憶を司る「海馬」は五感の情報が全て入ってくる重要な部分で、特に「歯状回」という箇所では神経細胞の新生が起こっています。近年、この神経新生が高齢になっても生じていることが分かってきました。

 われわれの「主観的幸福度」の上昇は、この歯状回に良い影響を与えます。これについては、「複数の選択肢から選ぶ」という状況で上昇するという研究もあります。

 レストランでビュッフェのメニューが2種類しかないグループと30種類以上あるグループとで、どちらがよりたくさんの量を食べたかという研究があります。この実験では“お腹いっぱいになるまで食べてください”という指示があり、同じ量になりそうなものですが、実際には30種類以上のグループのほうが少なかった。これは、多くの種類から選べるという幸福感によって満腹感を覚え、大量に食べられなくなっているからで、反対に選択肢が少ないとたくさん食べてしまいがちです。

推し活で疲れを感じにくくなる?

 食事に限らず、例えばネットサーフィンをしている時にも「選ぶ楽しみ」があります。ドーパミンも分泌され、気力が萎えた時などはやる気の回復が期待できます。旅行の効能に関しては、どこに行こうかとか現地でどんな料理を食べようかなどとネットで検索すれば、いっそう幸福感が増すわけです。

 またはやりの「推し活」は、テストステロンなど男性ホルモンの分泌に好影響を与えます。誰かを応援したり誰かのために仕事をしたりする際には、意欲を引き出す男性ホルモンが多く分泌され、体内のパフォーマンスを向上させています。男女問わず、高齢になって意欲の減退を感じたら、ぜひ誰かを推して分泌させたいものです。

 さらに「推し活」は疲れを感じにくくなる効果があり、応援による共同体意識で孤独感にも襲われず、認知症の予防効果も期待できるとして注目されています。

 昨今「老人脳」の予防では「脳トレ」がもてはやされています。認知機能のトレーニングというのはおもに前頭前野を刺激します。ですが、脳全体からすると小さい領域で、それよりはむしろ香りを嗅ぐなど根源的な刺激を与えるほうが、脳のさまざまな部位を使うことになるため効果的なのです。

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