セ・パ3人の監督を育てたPL恩師が語る「スパルタ指導」の真実 「OBが語るエピソードに憤りを禁じ得ない」

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「憤りを禁じ得ない」

 河野氏はこうも言う。

「いずれ立浪は監督になるだろうと思っていましたが、実現まで随分と時間がかかったように感じます。松井も運動神経の塊で強肩、脚力もあってセンスも光っていたけど、性格は立浪と違ってチームを引っ張るタイプではなく、少し抜けているというか、お茶目なところがありましたね(笑)。今江は2年の時からレギュラーで試合慣れしていたので3年生からキャプテン。当時から責任感が強かった」

 そんな今江のことで忘れられない事件があるという。

「今江がドラフト会議で千葉ロッテマリーンズから1位指名されることになっていたのに、直前で編成部長が替わり“3巡目で指名しますから”と言われてね。“それはないだろう”と激怒しました」(同)

 河野氏の怒りはただならぬものだったのではないか。PLは、監督・コーチの徹底的なスパルタ指導による猛練習、規律に厳格な寮生活や絶対的な上下関係で知られ、“白い歯を見せて(笑って)はいけない”という戒律まであるとされる。河野氏も“鬼コーチ”だったとか。

「確かにOBが、昔話を面白おかしくテレビで話す場面を見ることがありますが、憤りを禁じ得ません。私が指導していた当時そんなことはなかったし、自分は先輩の代に鉄拳制裁をやられたから後輩にはしなかった。今、慶應高が標榜する『エンジョイ・ベースボール』は時代の趨勢(すうせい)だし、よいと思いますが、一生懸命やった結果が楽しいのであって、最初から楽しんでやる姿勢だと、甲子園出場や全国制覇は難しいと思いますがね」(同)

 名伯楽の言を3人の監督たちはどう聞くか。

週刊新潮 2023年11月2日号掲載

ワイド特集「心模様と秋の空」より

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