女子卓球「15歳の超新星」張本美和、「すでに五輪出場できるほどの実力」を支える“高難度サーブ”と“勉学優先”

スポーツ

  • ブックマーク

ロサンゼルス五輪のころにはエースに

 2012年ロンドン五輪団体銀メダリストで日本の女王の座に5回輝いた平野早矢香氏はこう分析する。

「どのコースにも質の高いボールが打てますし、アジア大会のダブルスでは孫穎莎と王曼昱の元世界チャンピオンペアに勝ちましたが、張本選手のボールに対して中国ペアが対応できないことが多くありました。この1年くらいで経験と実績を積んできていますし、世界で戦えることを改めて証明してみせました」

 将来的にはどこまで伸びていくのか。平野氏が太鼓判を押す。

「日本のエースになる力が十分にあります。いま世界ランクも日本選手の3番目につけていますし、パリ五輪の選考レースではまだ上位にはいませんが、実力的には五輪出場の力は既にあると思います」

 平野氏によれば、中国をはじめ海外選手の多くが張本を脅威に感じているという。日本卓球協会関係者も個人的な感想として次のように指摘する。

「兄・智和選手と足跡がよく似ています。智和選手はリオ五輪当時、まだ売り出し中でしたが、東京五輪では日本のエースに躍進していました。美和選手もパリ五輪代表には間に合わないかもしれませんが次のロサンゼルス五輪のころには日本のエースになっている可能性が十分にあります。まずはその前の全日本選手権(24年1月開催)での上位進出が期待されます」

 今の勢いなら、史上最年少、中学生の女王戴冠もあるかもしれない。それほどの逸材なのだ。

勉学優先

 張本美和の両親は、中国四川省出身の元卓球選手ということも大きい。特に母・張凌さんは1995年の天津市で行われた第43回世界選手権の元中国代表選手である。2014年には日本の国籍を取得した。サラブレッドの美和は仙台市で生まれ、小さいころから頭角を現した。2歳で初めてラケットを握り、全日本の年代別大会を制し、中1で全国中学生チャンプになった。その後も、国際大会のU-15やU-17などで優勝を重ねている。

 さぞかし卓球の英才教育を施されたのかと思いきや、張本家の方針は勉学優先だった。下校するとまず宿題や予習復習に取り組み、その後でないと卓球の練習をさせなかったという。卓球担当記者が言う。

「智和選手は宮城県の模試で県内5番の成績を収め、美和選手も小学校時代、算数で全国1位なったことがあるほどでした。その結果、努力の大切さや、自分で考える力が育まれ、激しい練習に耐え抜く大切さを理解し、試合でピンチに陥ったときにも自ら乗り越える術が身につくなど非常に賢い選手です」

 前出の平野氏は、

「美和選手は特にバックハンドがうまい選手ですが、目立つ弱点がないことも特徴です。それは対戦相手からすると、非常に嫌で脅威に感じると思います。あと、女子選手ではあまり使わないYGサーブを勝負どころで使えるのも特徴ですね」

 という。

次ページ:世界トップの可能性

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。