オーバーツーリズムに「アニメの聖地」はどう対応しているか 製作者と地元自治体が練る秘策の数々

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意図せぬ“観光公害”の発生

『サンシャイン!!』の沼津もその例外ではなく、JR東海は23年3月から8月末にかけてコラボイベントを実施。6月18日には急行「ラブライブ!サンシャイン!!」号が浜松駅から沼津駅の間で運行され、同日『サンシャイン!!』とコラボしたウォーキングイベント「さわやかウォーキング」も実施した。

 コラボは大盛況に終わったようで、期間終了後の10月28日には『幻日のヨハネ』とコラボしたさわやかウォーキングも実施。これは『幻日のヨハネ』に新たな舞台となった施設を中心に歩くイベントで、さわやかウォーキングの従来の参加者に加え、『ラブライブ!』のファンも参加する形になった。

 コロナ禍で観光業界は大きく変わり、JR東海のようにアニメ作品への依存度を高めた企業もある。そして、インバウンドによるオーバーツーリズムの問題は、今後、各地で問題になるだろう。

 製作側が舞台地を明確にしている場合は、オーバーツーリズムの問題は先述のように回避可能だ。だが、問題は製作側も意図しない場所がファン主導で「聖地」になってしまう場合だ。例えば『鬼滅の刃』では様々な場所にファンが訪れているが、その大半は作品公認ではなく、ファンが「モデルはここではないか」と思って探訪している場所だ。

さらなる議論が必要

 地域側は、降って湧いたような形で訪れた観光客を相手に上手くビジネスにしている場合もあるが、地域によっては江ノ電の踏切のように、観光公害の温床になるケースもある。

 近年の作品は漫画作品でも製作時から舞台を明確にし、地域とのコラボも狙うことが珍しくなくなった。だが、中には作者の演出の都合で、明確な舞台やモデルを伏せたいケースもある。

 これ自体は作家の完全な自由だ。したがって、どうすれば舞台地でのオーバーツーリズムを回避できるか、版元やアニメ製作者、そして地域が一体となって議論していくべき問題だといるだろう。

河嶌太郎(かわしま・たろう)
ジャーナリスト。1984年生まれ。千葉県市川市出身。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。「聖地巡礼」と呼ばれる、アニメなどのメディアコンテンツを用いた地域振興事例を研究。「ITmediaビジネスオンライン」「Yahoo!ニュース エキスパート」「AERA」「週刊朝日」などウェブ・雑誌で執筆。共著に「コンテンツツーリズム研究」(福村出版)など。コンテンツビジネスから地域振興、アニメ・ゲームなどのポップカルチャー、IT、鉄道など幅広いテーマを扱う。近年は地方創生を企図した作品のシナリオ執筆にも携わる。

デイリー新潮編集部

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