趣里や蒼井優の名演技に頼り過ぎ…朝ドラ「ブギウギ」に足りないものは何か

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給与カット、人員削減に反旗を翻した団員たち

 14回。米国の株価暴落に端を発した世界恐慌(1929年)の波は梅丸少女歌劇団にも及び、公演先の梅丸劇場の周辺も閑散とするようになった。このため、歌劇団側はスズ子ら団員に対し、給与を3分の2にカットし、人員も削減すると通告してきた。

 これに反旗を翻したのが歌劇団の娘役トップスター・大和礼子(蒼井優・38)。「誰も辞めさせたくないの、みんなで楽しくやりたい」(13回)という信念を持つことから、賛同する団員と山寺に籠城し、ストライキに入る。大和は親に勘当されてまで歌劇団に入ったから、団員を家族と思っている。人員削減や待遇悪化など許せない。それは分かった。

 一方、スズ子はストライキの意味や背景がよく飲み込めていないようだったが、大和を慕っているから従い、歌劇団の親会社・梅丸の大熊熊五郎社長(升毅・67)に啖呵を切った。これも理解できた。ご覧になっている方はお分かりの通り、スズ子は感情が豊かで、ややお調子者だからである。

 分からないのはストライキに大きな動きのないまま、2週間後には収束したこと(18回)。大熊社長側が考えをあらためた。

「団員は会社にとって大事な人材。団員側の要求を全面的に受け入れる」(大熊社長、18回)

表層しか描かれていない桃色争議

 責任を取る形で大和と男役のトップスター・橘アオイ(翼和希)は辞めさせられたものの、人員と団員の給与削減は撤回された。スズ子は大和たちが辞めることに納得しなかったが、当の2人は梅丸側に抗議しなかった。大和はスズ子をこう諭した。

「ストライキっていうのは、それほど大変なことなの」(大和、18回)

 2週間しか過ぎていなかったが、なぜか梅丸劇場前には人だかりが戻っていた。朝ドラを含むドラマがリアリティを目指す必要はないものの、説得力は求められる。それが足りなかったように思う。

 ストライキ中の団員による自主練習や近親者との面会のシーンはあった(16回)。しかし、これは山寺での楽しい合宿にしか見えなかった。制作側は笠置さんが実際に経験した桃色争議をエピソードに盛り込みたかったのだろうが、残念ながら、その表層しか描かれていないから、分かりにくかった。

 このエピソードのモチーフである実際の桃色争議が起きたのは1933年。東京の松竹少女歌劇部(後の松竹歌劇団)と大阪の松竹楽劇部(後の大阪松竹少女歌劇団)などで発生した。

 無声映画の時代が終わりに近づき、音声付きのトーキー映画が広まり始めたことが発端だった。松竹本社は1932年、活動弁士たちに解雇を通知した。生活が出来なくなった弁士たちはストライキなどで対抗するが、この争議は会社側の勝利で終わる。

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