ヤクザから狙われた中東の駐日大使館 突然帰国した外交官の疑惑とは【元公安警察官の証言】

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「外交行嚢」

 ところが、外交官が出張で不在だった際、また不審な日本人がやって来た。

「警備員が別の大使館員に不審情報を報告したため、大使の知るところとなりました」

 勝丸氏は、大使から呼び出された。

「『大使館の近くに怪しい男がうろついている。パトロールしてくれないか』と依頼されました。それを受け、所轄署が不審者を調べたところ、暴力団関係者だとわかりました」

 勝丸氏は麻薬組織との関係を聞き出そうと、外交官を食事に誘った。

「彼にそれとなく、『怪しい人間と関係を持つと面倒なことになる。日本のメディアに報道され本国の外務省に知られて身分を失うことになりかねない』と言いました。彼は深刻な顔をしていましたが、何も話してはくれませんでした」

 勝丸氏が外交官と別れると、不審な男から尾行された。

「すぐに、2人の男が私を尾行しているのがわかりました。チンピラ風の男で、ただ後ろからついてくるだけでしたから完全に素人の尾行でした。大使館周辺をうろついていた男たちでしょう」

 勝丸氏は電車に乗ると、発車間際にホームに降りて尾行をまいた。

 その後、件の外交官が警備会社の不審情報を大使に報告しなかったことが問題視された。

「大使が警備会社の月報を見たとき、以前から不審情報が報告されていたことがわかったのです。大使は件の外交官を暴力団関係者とどういう関係なのか問い詰めたようです。しばらくすると、突然外交官は帰国してしまいました」

 勝丸氏は大使に外交官の帰国理由について聞いたが、何も答えてくれなかった。

 日本の暴力団は、外交特権を利用するために海外の外交官に接近することがあるという。

「外交官には外交行嚢(外交パウチ)という特権があります。これは外交上の機密文書や物品を入れる物で、空港の保安検査や税関検査で開封が禁じられています。これを悪用して麻薬などの禁制品を密輸する外交官もいるのです。帰国した外交官は、麻薬取引に関わってお金を稼いでいたのでしょう。暴力団が大使館の近くをうろついたのは、外交官が麻薬捜査に気づいて暴力団に協力しなくなったので、脅かしていたのではないでしょうか」

勝丸円覚
1990年代半ばに警視庁に入庁。2000年代初めに公安に配属されてから公安・外事畑を歩む。数年間外国の日本大使館にも勤務した経験を持ち数年前に退職。現在はセキュリティコンサルタントとして国内外で活躍中。「元公安警察 勝丸事務所のHP」https://katsumaru-office.tokyo/

デイリー新潮編集部

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