日本シリーズで「松坂大輔」にとどめを刺した意外な伏兵も…チームを日本一に導いた“3人の脇役たち”

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「松坂なら僕に任せてください」

 日本シリーズでは、史上最多のMVPを4度受賞した長嶋茂雄(巨人)をはじめ、チームの中心選手が日本一に貢献するイメージが強い。その一方で、下位打者や代打といった脇役たちが値千金の一打を放ち、ヒーローになったことも少なくない。【久保田龍雄/ライター】

 巨人がストレートの4連勝で西武を下し、2年ぶり日本一に輝いた2002年、松坂大輔から試合を決める代打タイムリー三塁打を放ったのが、15年目のベテラン・後藤孝志である。

 オープン戦で松坂からタイムリーを記録するなど相性が良かった後藤は、日本シリーズの相手が西武と決まると、原辰徳監督に「松坂なら僕に任せてください」と何度もアピールした。

「自信があったというよりも、それぐらいのことを言わなきゃ使ってくれないですから」。そんな必死の気持ちが通じたのが、巨人が3連勝で日本一に王手をかけた第4戦だった。

 2対2の6回、西武は先発・西口文也に代えて、第5戦に先発予定だった松坂をリリーフでぶつけてきた。

「お前がそこまで言うなら、失敗しても後悔しないぞ」

 絶対に負けられない一戦をモノにするための“背水の陣”だったが、松坂は2死球と制球が乱れ、2死一、二塁から斉藤宜之に勝ち越しタイムリーを浴びてしまう。

 なおも2死一、二塁、追加点が取れるかどうかで大勢が決まる重要局面で、原監督は「お前がそこまで言うなら、失敗しても後悔しないぞ」と後藤を江藤智の代打に送り出した。

「このひとことで、“何としても監督を胴上げするんだ!”と、とても充実した気持ちになれた。初球から何でもいこうと思っていた」。そして、松坂の初球、ストレートが高めに浮いてくるところをフルスイング。「卵を割ったような感触だった」打球は、ライト・垣内哲也の頭上を越え、巨人の日本一を決定づける2点タイムリー三塁打になった。

「松坂はすごいピッチャーだけど、(高橋)由伸、清原(和博)さん、江藤と続く強力打線の中で、僕が代打で出てきたから油断したのでは? その結果が初球の甘い真っすぐになり、一瞬の隙を突いてあの三塁打が生まれた。毎日苦しい練習を重ねてきたのに、自分自身に裏切られ、何度も悔しい思いをしてきたけど、“やっと自分を信じられた”と実感しました」

 巨人に一塁手として入団以来、毎年強力なライバルたちに出番を奪われ、移籍を考えた時期もあったが、「環境を変えるのは逃げることと一緒」と歯を食いしばって地道な努力を続けてきたことが、日本シリーズの大舞台で一報われた。

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