オーガスタ・ナショナルに7人目の女性メンバーが誕生 ナゾ多き名門クラブの実情とは

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入会の基準も不明

 オーガスタ・ナショナルが明かさないのは、女性メンバーに関することだけではない。従来からの男性メンバーが何名所属しているのかも公表されておらず、メンバーの氏名も年齢も職業も、一切、外部には知らされないことになっている。

 どうしたらメンバーになれるのか。いくら払えばメンバーシップを購入することができるのか。そうした条件や資格も何一つわからず、たとえ億万長者でも、たとえアメリカ合衆国大統領でも、オーガスタ・ナショナルから「メンバーにふさわしい」と認められない限り、グリーン・ジャケットを羽織ることはできないと言われている。

 長年の「噂」によれば、「オーガスタ・ナショナルのメンバーになりたい」と名乗りを上げた人々はウエイティングリストに載せられ、「空き」が出るのを待っているとのこと。その人数は200名とも300名とも推測されている。

 謎だらけ、秘密だらけで、ほとんど雲を掴むような話だが、それでもなお「オーガスタ・ナショナルのメンバーになりたい」という希望者が後を絶たないのは、オーガスタ・ナショナルやマスターズの伝統と格式、そして秘密のベールに包まれた謎の数々に果てしない魅力を感じるからなのだろう。

細かすぎるルール

 オーガスタ・ナショナルの「謎」は、マスターズ期間中、ギャラリーやメディアも必ずや感じさせられる。

 コース上では「携帯電話を持ち出してはいけない。使用してはいけない」とされ、この規定に違反したメディアは即座にクレデンシャル(メディア証)を没収されて会場から追放されることになっている。

 さらには、こんな決まりもある。ギャラリーもメディアも、コース上では「走ってはいけない」「寝転んではいけない」「靴を脱いではいけない」。

 私自身、マスターズ取材に赴いた最初の数年間は「なぜ?」「どうして?」とずいぶん戸惑い、首を傾げさせられた。しかし、マスターズ取材歴が20年を超えたころからは「それがオーガスタ・ナショナル、それがマスターズというものなんだ」とようやく思えるようになった。

 リドレー会長いわく、「これからはグリーン・ジャケットを羽織る女性メンバーの姿を、もっと目にすることになる」。

 それが近代のオーガスタ・ナショナルの新しい在り方ということなのだろう。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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