オーガスタ・ナショナルに7人目の女性メンバーが誕生 ナゾ多き名門クラブの実情とは

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 ゴルフ界の「女王」アニカ・ソレンスタム が男子ゴルフのメジャー大会「マスターズ」を主催するオーガスタ・ナショナルの「女性メンバーに加わったらしい」と米メディアが一斉に報じたのは、10月25日(米国時間)のことだった。メンバー入りの第一報が未確認情報として駆け巡った背景には、オーガスタ・ナショナル「らしさ」が見て取れる。【舩越園子/ゴルフジャーナリスト】

男子大会で予選通過の偉業

 ソレンスタムはスウェーデン出身の53歳。かつて米女子ツアー(LPGA)でメジャー10勝を含む通算72勝を挙げ、女子ゴルフ界を席捲したレジェンドだ。

 彼女がゴルフ史に刻んできたものは枚挙に暇がない。2001年のLPGAの大会「スタンダード・レジスター・ピン」では、2日目に「59」という快スコアをマークして世界中のゴルフファンを驚かせた。2003年には米男子ツアー(PGAツアー)の「バンク・オブ・アメリカ・コロニアル」に出場。1945年以来、女子選手が誰一人越えたことがない男子の大会における予選通過という「壁」に挑み大きな注目を集めた。残念ながら決勝進出はならなかったが、ソレンスタムの果敢な挑戦は大勢の人々に勇気と元気をもたらした。

 しかし、2006年にメキシコ出身のロレーナ・オチョア についに王座を奪われると、2007年は首や腰の故障とあいまって勝利が1つも無い1年となった。

 それでも2008年は次々に3勝を挙げて王座奪還かと期待された。しかし、その矢先の同年5月、ソレンスタムは「サイベース・クラシック」の会場で突然、会見を開き、37歳の若さで引退を表明、ゴルフ界に衝撃が走った。

 その後のソレンスタムは、結婚して妻になり、出産して母になり、その一方で「アニカ・アカデミー」や「アニカ・インターカレッジエイト」を創設し、ジュニアや女子ゴルファーの育成にも力を尽くしてきた。

 そして、2019年に「オーガスタ・ナショナル女子アマチュア選手権」が創設されてからは、1番ティでオナラリー・スターターを務めるなど、オーガスタ・ナショナルとの接点もできていた。

 そうした歩みや経緯を考えれば、ソレンスタムがオーガスタ・ナショナルから女性メンバーとして歓迎されることは自然の流れと言えそうである。だが、そんな彼女のメンバー入りの第一報が、「メンバーになったらしい」という「未確認情報」として報じられたのはなぜだったのか。

 実を言えば、その背景にオーガスタ・ナショナルならではの「らしさ」が見て取れる。

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