「娘は毎日“劇団に居たくない”と泣いていた」「1日20時間労働」 宝塚劇団員の親たちが明かす「凄絶ブラック労働」の実態

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1日20時間労働

「一応、休演日の毎週月曜日が公休日になりますが、その休日も稽古や小道具の調達などの準備をしなきゃいけない。まともな休みなんてないし、誇張抜きで1日20時間は働かされるわけです。娘が“時給に換算すると450円だ”なんて愚痴を漏らしているのを聞いたことがあります」(同)

 まったく割に合わない待遇であるにもかかわらず、生徒は制作費の一部について負担を強いられる。元団員の母親が言う。

「舞台で使うメイク道具なども、生徒たちでそろえないといけない。また娘役で背が高い場合は低いヒール、逆に背が低い場合は高いヒールを買う必要があり、パンプスも体格に合わせてオーダーメイドする。劇団の安い月給だけでやり繰りするのは不可能。大半は親から仕送りをもらっています」

“劇団に居たくない”と毎日泣いていた

 一方、さる元団員の父親が明かすのは「不眠不休」の労働実態である。

「特に大変なのが、研七までによる新人公演の期間です。新人公演は本公演の期間中に行われるのですが、そのための練習は、本公演が始まってからしかできません。ですので、本公演をこなしながら早朝と夜に練習するしかない。今の労働基準法ではありえない実働時間ですよ」

 加えてこうも述べる。

「夜に稽古が終わっても雑用があり、同期同士で反省会もしなきゃいけない。ベッドに入るのが深夜1時や2時になるのは当たり前。しかも早朝5時、6時に起きて、また練習という生活が続きます」(同)

 前出の母親も、娘が体験した過酷な生活を次のように打ち明ける。

「本公演を終えて、真夜中の24時まで新人公演のお稽古。それから自宅に帰って来ても、新人公演のフォーメーションとか衣装のことをノートにいろいろ書いたりして、寝るのが夜中の3時ごろ。それでまた、次の日の朝早くに出て行って午前11時と午後3時の本公演の舞台に立つ。そして夜になれば、お稽古という繰り返し。もう、見ていられないくらいキツいですよね」

 続けて言うには、

「現役のあいだ、娘はいつも体の不調を訴えていました。睡眠時間を確保できない生活が続く一方で、休みの日に眠りにつくこともできなくなった。せっかく寝つけても、なにか悪い夢でも見るようで、フッと目が覚めて『行かなきゃ』と叫んだり……。娘は詳しく言ってくれませんが、睡眠薬も服用していたようです」

 そして、こう声を振り絞って言う。

「うちの娘は劇団を辞める直前には“(劇団に)居たくない、居たくない”と、毎日泣いていました」

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