「ここは地獄」ガザに残る「国境なき医師団」日本人スタッフの証言 「助けられるはずの命が失われる」
「寝るときも足の震えが止まらない」
やはりパレスチナで活動するNGO「パルシック」。この東京本部にも、ガザ現地駐在員たちから悲痛なメッセージが届いている。
その中の一人である女性スタッフはこう述べている。
〈家にはもうパンはありません。かろうじて残っているツナ、卵、豆の缶詰、キュウリで食いつないでいます〉
〈大学生の次女は恐怖で寝るときも足の震えが止まらず、コントロールできない状態です。中学生の長男も常に恐怖でおびえ、寝るときにも飛びついてきます〉
〈家族みんなで誰か死んだらどうするかを話し合っていた。家はどうするか、家財はどうするか〉
「助けられるはずの命が…」
現代ニッポンと比して、ガザでは想像を絶する世界が広がるが、実は9千キロも離れた地でのこの戦争は「対岸の火事」とは言い切れない。少数ながら、壁の中には日本人も滞在し、ガザの住民と同じ光景を目の当たりにしている。
「避難所はまさに地獄のような状態になっています」
そうガザからの国際電話で訴えるのは、「国境なき医師団」のスタッフ・白根麻衣子さんである。白根さんがガザでの医療支援プロジェクトに従事したのはこの5月から。彼女が言う。
「水も電気も燃料もすべての供給が止まり、飲み水を探すのにも手一杯。もちろんお風呂もシャワーも入れません。避難民のキャンプでは何千人に1基のトイレしかなく、そのトイレも水不足で流れなくなり、衛生状態の悪化が深刻です。空爆は無秩序で、24時間どこでも落としてくる。医療機関も機能しなくなり、また機能したとしても、人手不足のために助けられるはずの命が次々と失われていきます」
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