東海オンエアの“内紛”でYouTuberがどんどん陳腐に…「ゲタを履かせてもらった時代は終わった」
YouTubeの陳腐化
冒頭で見た通り、そもそも東海オンエアは“お行儀の良い”グループではない。特に保護者の目線に立てば、子供には絶対に見せたくない動画だろう。それでも斯界のトップランナーとして活躍しているのはなぜなのだろう。
「東海オンエアが人気を集めているのは、彼らが愛知県岡崎市に拠点を置き、幼なじみという“絆”を大切にしているグループだからです。地元愛にあふれ、仲間を大切にする“マイルドヤンキー文化”を連想する方もいるでしょう。さらに、東海オンエアの場合、本物の“不良”ではなく、“やんちゃ”という文脈でファンの支持を集めていました。良識派が眉をひそめるような内容でも、ファンからは『小学校とか中学校で、ああいうやんちゃで面白い子っていたよね』と好感を持って見られてきたのです」(同・井上氏)
東海オンエアの“内紛”を分析すると「YouTubeの動画コンテンツ、つまりYouTuberが陳腐化してきた」ことが浮かび上がるという。
「YouTuberのフロントランナーは2000年代前半にデビューしました。それに追随したYouTuberも含め、彼らは右肩上がりの人気を獲得してきました。その背景には『ネット上から新しいエンターテインメントが誕生する』、『YouTuberはテレビに代表される古い動画コンテンツの常識をぶっ壊す』という期待感がありました。しかし、あれから20年以上が経過し、あの期待感は幻に終わったことが明らかになったのです。今や素人の動画ならTikTokのほうが元気ですし、プロの動画はNetflixなどで楽しめます。YouTuberが提供するコンテンツは、単なる動画コンテンツの一種類となり、価値が下落してしまったのです」(同・井上氏)
問われる危機管理
YouTuberは地上波のバラエティ番組を駆逐してしまうという予測もあったが、そんなことは起きなかった。まさに「幽霊の正体見たり枯れ尾花」──恐れられている人や物の実体がつまらないものであること──だったのだ。
「『ネット発のエンタメは凄いものになるはずだ』という期待感に支えられ、少なからぬYouTuberがゲタを履かせてもらっていました。まさに実力以上の評価だったのです。しかし、今や“上げ底”は消滅しました。かつては人気だったYouTuberが苦境に立たされている根本的な原因です。そしてTikTokやNetflixなどのライバルが出現し、YouTubeの視聴回数は減っています。となれば、彼らの挽回も厳しいでしょう。スター扱いされてきたYouTuberでも相当数が脱落。今後は教育など地道でも真面目な動画配信者が評価される時代に変わっていくと考えられます」(同・井上氏)
とはいえ、東海オンエアは依然として安定した人気を誇っているのは前に見た通りだ。今回の騒動も危機管理さえうまくいけば、少なくともファンの支持は揺るがないという。
「YouTuber自体の価値が下がってしまいましたし、今度の“内紛”は一般には彼らのイメージダウンを招きました。東海オンエアは今後、地上波のテレビ番組に出演したり、企業と広告契約を結ぶことは減るかもしれません。とはいえ、まだまだ多くのコアなファンが彼らを支えています。活動再開後はYouTubeを本拠地として地道な活動をすれば、それなりの収入を確保できるでしょう」(同・井上氏)
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