低強度の運動で「ビジネス脳」が鍛えられる! 「きつい運動」よりオススメの理由とは

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「認知予備力」

 運動をやめると萎縮をストップする効果もなくなりますが、それでも運動時にみられた認知機能の改善効果は、ある程度持続しています。これは「認知予備力」といい、運動を通じて脳機能を高めることで、萎縮しても残っている箇所が、本来であれば他の部分が稼働するはずの機能を代償的に補っているのです。

 もし運動を続けられなくなっても、それまでの運動経験の蓄積効果が一定期間残存しており、それが認知症の発症を遅らせてくれる可能性があります。

 赤字で書かれた「青」、あるいは黄色の「緑」といった漢字を見てその色を答えてもらう「ストループテスト」で実行機能を測ると、若齢の方では言語や計算など論理的思考を司る左脳の前頭前野の一部が活性化します。しかし、齢(よわい)を重ねると萎縮や機能低下が生じ、代わりに記憶力や想像力を司る右脳がバックアップを始めます。これも「認知予備力」の一つです。

 加齢による衰えは避けられないものの、認知予備力を高める生活を保っていれば、正常な判断をする機能は維持できます。そのために、年を取っても楽しい低強度運動をぜひ習慣づけましょう。

征矢英昭
筑波大学体育系教授 ヒューマン・ハイ・パフォーマンス先端研究センター副センター長

週刊新潮 2023年10月26日号掲載

特集「齢を重ねても脳は若返る カギは『神経細胞の新生』 “脳のプロ”が実践『老人脳』にならない“新生”法」より

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