特別な銃器「コーナーショット」も開発…イスラエル軍はハマスが掘った450キロ「地下トンネル」をどう攻略するのか
特殊兵器「コーナーショット」
イスラエル軍はトンネル攻撃を必須の作戦と考え、着々と準備を重ねてきた。例えば、イスラエル軍は南部にあるネゲブ砂漠に人口都市「バルディア」を建設。市街地戦やトンネル内での戦闘などを訓練してきた。
「正確に言えば、イスラエル軍のツェリム陸軍基地内に『ツェリム市街戦訓練センター』が設置されているのです。4万1000平方メートルという広大な敷地に、600ほどのモスクや集会所、8階建のビル、張り巡らされた地下トンネルなどが建設されました。まさに人口都市であり、『リトルガザ』と呼ぶ人さえいます。ここでイスラエル軍の兵士はトンネル戦の猛訓練を受けているのです」(同・軍事ジャーナリスト)
トンネル戦に備え、イスラエル軍は特別な銃器も開発している。その名も「コーナーショット」だ。
「コーナーショットはショットガンのような形で、先端に拳銃を取り付けることができます。そして、前の部分を60度、折り曲げられるのです。先端にはビデオカメラが装着され、曲がった先の様子を動画で見ることができます。トンネルの角に潜みながら、60度に曲げた拳銃を突き出すというわけです。ビデオに敵が映れば、引き金を引きます。先端にミッキーマウスやテディベアの人形を付けることもあります。トンネルの角からいきなり人形が姿を見せると、戦闘員は驚きます。その不意を突いて拳銃を発射するというわけです」(同・軍事ジャーナリスト)
老獪なハマス
イスラエル軍は長年ガザ地区で戦闘を行い、その戦訓から改良を続けてきた。トンネル戦の訓練も綿密に行ってきた。少なくともイスラエル軍は、準備万端という認識だろう。
しかし、現時点では「ハマスの老獪さが勝っている」と軍事ジャーナリストは指摘する。
「一例を挙げれば、燃料の要求です。ハマスは『病院の自家発電で燃料が必要』と主張しており、それ自体に嘘はないのでしょう。しかし、ハマスもドローンを持っています。燃料が届いて自家発電が開始されれば、ハマスはドローンの充電に使うでしょう。これが“人道支援”にイスラエルが難色を示している理由ですが、国際世論は徐々にパレスチナ人に対して同情的になっています。時間が経過すれば、さらにイスラエルの対応を非人道的と非難する声は増え、発端となったハマスによる大規模攻撃はどんどん忘れられていくでしょう」