過去最悪「熊被害」の秋田県に抗議が殺到 “ハンターの個人情報を特定”、“無関係の市町村にクレーム”のやりすぎ行為も 地元県議は「親子熊を駆除してから一気に…」

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過度なクレームが行政を混乱させている

――自治体ではクレームの電話に職員が応対しなければならず、業務に支障が出ていると報じられていました。

宇佐見:実際、業務は妨害され、職員は疲弊していますね。あと、猟友会の方と話をしたとき、そういうクレームがうちにくるんじゃないかという不安が頭をよぎると言われました。そして、駆除の依頼を受けて山に入った時も、そういう不安に襲われると言っていました。我々のような議員であれば、抗議や意見を受け止めるのも仕事です。しかしながら、猟友会、県庁、市町村の職員は違う立場でしょう。こうしたクレームが続くと、行政や猟友会の判断を迷わせてしまい、秋田県がこれまで熊と共存に向けて取り組んできた施策の方向性がぶれてしまいかねません。

――そして、猟友会のハンターのなり手不足も、以前から秋田県で問題視されてきました。

宇佐見:そもそも、狩猟免許を取得する若い人が減っている中、今回のような不当なクレームが来るようになってしまったら、とてもじゃないですがハンターになろうなんて思わないですよ。熊の駆除をする人が、どんどん減ってしまう可能性もあります。熊を駆除しても儲かるわけではありません。出動要請が来たら、ほとんどのハンターは一種の使命感で山に入っているような状態です。こうした勇敢なハンターに大多数の県民は感謝しています。

――抗議をしてくる人に、これだけはわかってほしいなどの思いはありますか。

宇佐見:感情的なクレームは、できればやめていただきたいと思います。我々は人命が第一で、そのうえで熊という種を保護していき、生態系全体のバランスも考え、個体数を適正に保つにはどうすればいいのかと考えている。この観点は理解していただきたいのです。そして、攻撃的な電話も多いようですが、意見を伝える際にはどうか冷静な対応をお願いしたい。電話だと職員の時間を拘束しますから、主張を伝えたいならメールでも可能です。繰り返すようですが、我々も熊を駆除したくてしているわけではありません。人里に現れた熊は、人命を守るためにやむを得ず駆除しているのです。動物を守りたいという思いを抱くのも結構ですが、できれば地域の実情を理解したうえで、提案や活動をしていただきたいと思っています。

山内貴範(やまうち・たかのり)
1985年、秋田県出身。「サライ」「ムー」など幅広い媒体で、建築、歴史、地方創生、科学技術などの取材・編集を行う。大学在学中に手掛けた秋田県羽後町のJAうご「美少女イラストあきたこまち」などの町おこし企画が大ヒットし、NHK「クローズアップ現代」ほか様々な番組で紹介された。商品開発やイベントの企画も多数手がけている。

デイリー新潮編集部

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