ソフトバンク、過去10年の“ドラ1”が活躍できない…他球団からは「選手の見極めが疎かになっている」と厳しい指摘

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ソフトバンクであれば育成でもOKというケースも

 筆者がアマチュア野球の取材を重ねていくと、ソフトバンクの育成ドラフトを巡って、他球団の関係者から以下のような話が聞こえてきた。

「(ドラフト候補となっている選手が)支配下の指名でなければ、プロ入りせずに大学進学や社会人を選ぶというケースは非常に多いです。プロ側は事前にそういった条件を調査しますけど、他の球団には育成での指名はNGと伝えていても、ソフトバンクであれば育成でもOKというケースがあるとよく聞きます。他の球団からすれば、『それはどうなんだ?』という話になりますよね。育成ドラフトで少しでも良い選手を多く指名したいソフトバンクの努力だと言えますけど、そんなことばかりに力を入れていて、肝心の支配下で指名する選手の見極めが疎かになっているのではないでしょうかね……」

 筆者も、この話を裏付けるような出来事を目撃している。

 個人攻撃を避けるため、あえて実名は伏せるが、現在、リリーフで大活躍している“ある投手”が大学生だった頃の話だ。多くのスカウト陣が、彼の登板を期待して球場に視察に訪れていた。だが、なかなか登板機会がなかったことから、ソフトバンクのスカウト陣だけが試合の中盤で球場を後にした。

 結局、その投手は、最終回に登板して見事なピッチングを見せたのだが、他球団のスカウトは「ホークスだけが帰っていたけど、見なくて大丈夫だったのかな……」という心配する声も出ていた。

 もちろん、ソフトバンクは他の選手の視察に向かった可能性があるとはいえ、これは春先に起きたことで、候補選手を絞り込む段階ではない。

 しかも、その時は、担当スカウトだけでなく、管理職を含む複数のスカウトが顔を見せたにもかかわらず、全員が試合途中で帰ってしまったことで、1球団だけ“空振り”に終わったのだ。これだけで判断することは早計であるが、 “象徴的な出来事”として取り上げた。

 このオフにも、昨年に続いて大型補強が噂されているが、やはりチームの根幹を担うのは、ドラフトで獲得した選手だ。過去10年に獲得した選手の苦戦を教訓にして、スカウティングを見直すことができるのだろうか。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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