認知機能の維持に効果抜群な楽器とは? 専門家が解説 「昔話をすることも脳に効果が」
「可塑性」を高める
運動以外にも認知症リスクを下げる要因はあり、その一つが趣味を楽しむことです。好奇心をもちながら楽しく頭を使うというのは、脳の健康に非常に良いのです。その最たるものは楽器演奏。私もピアノを弾きますが、脳の可塑性、つまり変化する力を高めてくれるので、結果として認知機能の維持に大いに有効です。スポーツ観戦や音楽鑑賞といった受動的な趣味に比べ、自らスポーツをしたり楽器を弾いたりという能動的な趣味の方が、効果は見込めます。楽譜を読んで理解するという作業には、空間認知をはじめさまざまな認知の要素が含まれているのです。
ピアノでなくとも、カスタネットやウクレレなど、手をつけやすい楽器から始めてみればよいと思います。
「主観的幸福度」を上昇させるには、相手とのコミュニケーション、それも文字だけではなく表情のわかるものが望ましい。会話というのは、ただバラバラに喋っているのではなく、常に相手の表情の変化やしぐさ、声のトーンなどを感じ取りながら意思や感情を読み取るわけですから、やはり脳の可塑性向上につながり、認知機能を活性化させることになります。
ノスタルジーに浸るのも脳にいい
また相手と共感する力を高めることで、ストレスを減少させることができ、これが主観的幸福度を上昇させます。社会的孤立を避けることが第一ですから、会話の内容が新しいとか、難しくなければいけないということはありません。
そして、昔の出来事を思い出す、ノスタルジーに浸るという行為も、脳には良い効果があるとされています。これは決して後ろ向きの行動ではありません。昔のことを考えている時に使う脳の領域は、実は未来のことを考える時に使う領域と一致している部分が多いとされている。つまり私たちは過去を回想しながら、未来へ目を向けているともいえるのです。
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