認知機能の維持に効果抜群な楽器とは? 専門家が解説 「昔話をすることも脳に効果が」
周囲に関心が向かなくなる、記憶が曖昧になる、同じ話を繰り返す、見境なく感情的になる……。いずれも脳の老化にともない顕著となる現象だという。こうした「老人脳」はどうすれば防げるのか。専門家が語る楽器の効能とは。【瀧 靖之/東北大学教授、スマート・エイジング学際重点研究センター長】
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脳の健康を保つというのは、私たちが考えたり判断をしたり記憶したりといった、いわゆる高次認知機能をいかに維持し、生活の質を持続していけるかという点に尽きます。
記憶に関わる海馬の機能を維持するには、有酸素運動が最良です。これにより海馬の「歯状回」という部位で神経新生が起きることが明らかになっています。始めるのがおっくうな人でも1日30分ほど、ちょっとした時間を使って習慣づけられればいいと思います。私も普段、外出先では基本的にエスカレーターでなく階段を上り降りしており、周りに人がいなければいつも一段とばしで駆け上がっています。息が弾む程度の運動を、合間を見つけて少しずつでも重ねていくという感じです。
「脳腸相関」
食事に関しては、一つずつの栄養が脳に与える効果がとても小さいため、神経新生を促す物質や食物の研究は非常に難しい。それでも一ついえるのは、同じ栄養素でも取り方によって効果が全く異なってくるということです。
例えば、果物はそのまま取れば食物繊維のおかげで血糖値は急上昇しにくいのですが、ジュースにすると急激に上がりやすくなります。血糖値が高まって成人発症型糖尿病となると認知症リスクも上昇するので、甘いジュースはなるべく避けた方がよいでしょう。
私は食事の時、ベジタブルファーストでまず野菜を食べ切ってからたんぱく質や炭水化物を取り、最後にデザートという順番を厳守しています。これも血糖値を乱高下させないためで、筋トレの効果もあって体脂肪率は9%前後を維持しています。また最近は「脳腸相関」といわれており、野菜をしっかり取ると腸内細菌の栄養にもなるので、その点にもケアしています。
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