なぜ栃木県佐野市がクリケットの聖地に? 五輪出場の可能性は?
2028年ロサンゼルス五輪から採用される新競技がIOCから発表された。
復活した野球・ソフトボールをはじめ、スカッシュ、フラッグフットボール、ラクロスとともに選ばれたのがクリケットである。
インドなど旧英国領で盛んと聞く。サッカーに次ぐ競技人口を誇り、年俸数十億円のプロ選手もいるとか。でも、日本でプレーしている人なんているのか。
それがいるのである。
国内競技人口は4千人強。関東圏を中心に300ものチームがひしめく。日本クリケット協会という組織があり、女子やジュニアを含む日本代表チームもある。先に中国で催されたアジア大会にも出場していた。
発表があった今月16日、日本協会は栃木県佐野市で記者会見を行った。
実はここ、日本クリケットの“聖地”なのだ。
なぜ佐野でクリケット?
「佐野には協会本部のほか、日本唯一の天然芝グラウンドを含む九つものグラウンドがあるんです」
と宮地直樹事務局長が胸を張る。しかし、なぜまた佐野でクリケットを?
「スコットランド人の母を持つ私は、隣町に住んでいて、近くの教会に通っていました。その牧師一家が佐野に住んでいたのですが、英国に帰り空き家になった。そこに移り住んだのです」
2010年のことだった。佐野に根差した宮地氏は、地元の老舗「第一酒造」会長で、当時、佐野商工会議所会頭だった島田嘉内氏に普及の支援を請うた。その島田氏が話を継ぐ。
「はじめて宮地君に会ったとき“クリケット”と聞いてもピンとこなかったですよ。馬に乗る競技かと」
それはポロです。で、なぜ手助けを?
「佐野はとても住みやすくていい街なんだけど、特長がない。そこでスポーツで町おこしできないかと考えていたんです。聞いたらクリケットは“紳士・淑女のスポーツ”というじゃないですか。そして子供たちもできるという。メジャー競技の一流選手を育てるのは大変だけど、やっている人が少ないクリケットなら一流選手が育つかもしれない。これだ!と思いました」
[1/2ページ]