独立リーグがなぜ、今年のドラフトを席捲したのか? 阪神、ロッテが「159キロ右腕」をドラ2で指名する“史上初の快挙”
野球だけに集中できる環境
どうして、これほど指名が多かったのだろうか。その理由は主に三点が考えられる。
一つ目は、長所を伸ばす指導である。前出の大谷と椎葉は、社会人チームを経て、今年から独立リーグに移籍した。入団後、ともに一気に球速がアップして、上位指名を勝ちとっている。大学野球や社会人野球は、ピッチングのまとまりや総合力の高さを要求されるため、球速だけが秀でていても、試合でなかなか起用されないことが多い。それに対して、独立リーグは、大学野球や社会人野球に比べて試合数が多く、所属する選手の目標はNPB入りと明確であり、選手が持つ“武器”をさらに伸ばすことに集中ができる。
二つ目は、大学や社会人より早期にNPB入りが狙えることだ。独立リーグに4月以前に入団していれば、その年のドラフトで指名対象になることができる。これは本気でNPB入りを狙う選手にとって、大きなメリットだろう。
そして、三つ目。独立リーグ側のスカウト陣へのアピール活動だ。独立リーグは、各球団がNPB球団と積極的に交流戦を行っているほか、リーグで選抜チームを編成し、NPB球団と対戦する機会が増えている。また、所属チームやリーグの運営が、活躍した選手の映像を編集し、SNSを通じて積極的に公開している。この結果、スカウト陣は、自軍の選手との比較がしやすく、情報量が増えて判断材料が多くなったことで、ドラフト指名に踏み切りやすくなった。
「高校生、大学生に比べて、独立リーグは圧倒的に試合数が多いですから、それだけ手元のデータが増えます。リーグ側も、選手をNPBに送り出すという目的がありますから、こちら(NPB球団)とも連携しやすい。選手の質をみても、独立リーグに入ってから成長する度合いが以前よりも格段に上がっています。野球だけに集中できる環境が大きいですよね。高校生の選手が、(大学や社会人を選ばずに)独立リーグに行くというケースが、今後さらに増えるかもしれません」(前出のパ・リーグ球団スカウト)
独立リーグの運営を巡っては、リーグの分裂やチームの消滅といった苦しいニュースも報じられているが、今年のドラフト会議で、過去最多の選手を輩出したことは大きな成果であり、日本球界にとって欠かせない存在になった証拠だ。来年以降も、新星が飛び出してくることを期待したい。
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