独立リーグがなぜ、今年のドラフトを席捲したのか? 阪神、ロッテが「159キロ右腕」をドラ2で指名する“史上初の快挙”
“東都7人衆”は全員が1位指名
ドラフト会議が10月26日に開かれ、122人(支配下72人、育成50人)の選手たちが指名された。大学生の投手に好素材が多く、特に注目の高かった東都大学野球所属の7人、いわゆる“東都7人衆”は全員が1位指名を受けた。世代ナンバーワン投手と呼ばれた前田悠伍(大阪桐蔭)は、再抽選で3球団が競合し、ソフトバンクが指名権を獲得している。【西尾典文/野球ライター】
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左腕の古謝樹(桐蔭横浜大)は楽天、外野手の度会隆輝(ENEOS)はDeNA、内野手の横山聖哉(上田西)はオリックス、同じく内野手の上田希由翔(明治大)はロッテにそれぞれ1位で指名された。いずれの選手も事前からスカウト陣から高い評価を得ており、ドラフト1位で指名された12人は、おおむね想定の範囲内だった。
しかし、予想外だったのは、ドラフト2位で指名された選手だ。ロッテが指名した大谷輝龍(日本海リーグ・富山)と、阪神が指名した椎葉剛(四国アイランドリーグ・徳島)という独立リーグに所属する投手である。大谷、椎葉はともに最速159キロを誇る剛腕だ。
独立リーグ出身者の指名順位は、2013年に中日から2位指名を受けた又吉克樹(現・ソフトバンク)が最高であり、大谷と椎葉はこれに並んだ。しかも、2人同時に2位で指名されたことは、“ドラフト史上初”の快挙である。
筆者は、スカウト陣が椎葉を高く評価していた印象を持っていたが、大谷がまさか2位で指名されるとは思っていなかった(※NPB球団の入団テストを受けていたという情報は得ていた)。
下位や育成でも独立リーグ勢が“躍進”
ドラフト会議後に話を聞いたスカウトは、以下のように話している。
「どの球団も、椎葉には熱心だったと聞いていました。(交流戦で対戦した)ソフトバンクのファームを完全に抑え込んでいましたからね。シーズン中に少し投げていない時期があった点は不安でしたが、コンディションに問題なければ、3~4位でと考えていた球団は多いと思います。どうしても椎葉を指名したいという球団は、そこから少し順位を上げるので、阪神の2位指名は納得できました。一方、大谷は支配下の指名で考えている球団はあると思いましたが、2位とは驚きましたね。ロッテは、(日本海リーグの)富山球団出身の方が、独立リーグのスカウトを担当していますから、その繋がりで、かなり密に情報を集めていたのでしょう」(パ・リーグ球団スカウト)
大谷、椎葉ともに2位という順位を考えると、早くから戦力として期待されていることは間違いなく、大学生投手に注目が集まる裏で着実に評価を上げていた。
そして、上位指名だけはなく、下位や育成でも独立リーグ勢の“躍進”が続いた。支配下で6人、育成で17人の合計23人もの選手が指名されたのだ。これは、指名選手全体の2割弱にあたる。ここまで独立リーグの選手が、ドラフト会議を席捲した年はなかった。
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