いろいろな場所に出かける人は幸福度が上がる! 脳を老化させないために必要な移動、旅行の習慣

ドクター新潮 ライフ

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 周囲に関心が向かなくなる、記憶が曖昧になる、同じ話を繰り返す、見境なく感情的になる……。いずれも脳の老化にともない顕著となる現象だという。こうした「老人脳」はどうすれば防げるのか。専門家は「移動を繰り返すことで神経の新生が促せる」という。【西 剛志/分子生物学者・脳科学者】

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 人間の記憶を司る脳の「海馬」は、外部からの刺激の最初の入口にあたります。五感の情報が全て入ってくる重要な部分であり、この中の「歯状回」という部位では神経新生(新たな神経細胞が生まれる現象)が起こります。それは従来、子どもの時期に終わっていると考えられてきたのですが、実は高齢になっても細胞は新生していることが近年、分かってきました。

移動する人は「主観的幸福度」が高い

 海馬は記憶だけでなく、空間を認知する時に活動する「場所細胞」という細胞にも関係しているので、われわれは移動する際、海馬を刺激していることになります。2020年に米国で発表された研究では、頻繁に場所を移動する人とそうでない人を比べると、前者の方が圧倒的に「主観的幸福度」が高いという結果が出ています。高齢の方にGPSを装着して一日の動きをモニターしたところ、毎日同じ道の往復ではなく複雑に動いたり違うルートを通ったりしている人の方が、より幸福度が高かった。そういう人たちの脳を調べてみると、海馬に加えて「線条体」というドーパミン(幸福感をもたらすホルモン)を分泌する場所まで活性化していることが分かったのです。

 従って、仕事で行き詰まった時にカフェでコーヒーブレイクするのは理にかなっているといえます。リフレッシュできるのは決して気のせいではなく、脳で神経新生が起こって海馬が活性化している証拠なのです。

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