クーアンドリクの動物虐待疑惑に業界内から“反旗” 「過去32人を出向」”蜜月関係”だったペット保険会社が調査を開始
〈ペット業界のビッグモーター〉
プードルの膝は大手術を経て一応の回復を見た。Aさんは損害賠償を求めてクーリクを提訴、現在も係争中だ。
8月、江の島店と東久留米店で、子犬が客に引き渡された直後、パルボウイルスにかかって死亡したことも当の飼い主の証言で明らかになった。パルボは子犬が罹患すると、恐るべきことに8割以上が死に至る。
かくて、クーリクの繁殖場や店舗では、犬猫の命が無情にも失われる事態が半ば常態化しているのである。
クーリクに〈ペット業界のビッグモーター〉との悪名が冠せられたのも頷けよう。しかし、ペット業界の事情に詳しいX氏は、中古車販売業と同様に語られるべき“真の理由”は別にある、と話す。
「大手ペットショップの背後に、損害保険会社が控えている点です。その構造こそがビッグモーターの件に似ている。クーリクがどんな個体だろうと安心して売れるのは、同社が保険代理店でもあって、顧客にペット保険を販売しているからです。売れば売るほど保険会社から手数料が入ってきます。一方、保険会社にとってクーリクのような業者は、新規顧客を獲得してくれるありがたい存在で、両社は持ちつ持たれつの関係なんです」
年商500億円の「ペット保険のパイオニア」
クーリクと手を携えながら事業を拡大してきた保険会社がある。ペット保険シェア1位に君臨するアニコム損害保険だ。
アニコムは2000年、東京海上火災保険(現・東京海上日動火災保険)を脱サラした現会長の小森伸昭氏(54)が興した。X氏が言う。
「最初は、ペットの共済を扱うベンチャー企業でした。やがて、動物病院で『保険証』を提示すれば、人間と同じく手ごろな実費負担のみで済むサービスが好評を博し、ペットブームにも乗って会員数が急増します。07年、金融庁から損害保険会社の免許を取得し、08年にペット保険『どうぶつ健保』の販売を開始。10年に親会社のアニコムホールディングスが東証マザーズに上場し、14年、東証一部に昇格しています。目下、契約者100万人、年商500億円に及ぶペット保険のパイオニアです」
他方、クーリクの誕生は99年。創業者の大久保浩之氏(44)が20歳のころだ。
「大久保氏が最初に手がけたのはペットの通信販売。その後、安売り路線でチェーン展開に成功します。特に利益をもたらしたのは、14年ごろに始めた『フード定期プラン』です。生体引き渡し後のペットフードを“月々安価でお送りする”“契約すれば生体価格を大幅割り引きする”という触れ込みの商品で、解約に縛りをかけることで収入が長く確保される仕組みを構築しました」(クーリク関係者)
店舗内に動物病院やトリミングサロン、ペットホテル、猫カフェを併設するなどのアイデアも当たった。全国津々浦々に猛スピードで新規開店を進め、今や上海など海外拠点3店舗を設けるまでになっている。
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