動物保護ハウスを経営する坂上忍が「ペットショップの犬・猫大量生産」に思うこと 「世界から見ても恥なのに変わらない現実」とどう立ち向かうべきか
多分、僕の代では無理でしょうね
では政治を動かすにはどうするべきか。そう考えた坂上が取った手法こそが「ビジネス」としての保護活動なのだという。
「政治家なんて損得勘定で生きている。動物愛護でも、得になりそうだと思ったら近寄ってくるんです。うちがビジネスと言い切っているのは、利用されるのではなく、うちと組むんであれば、こっちはこういうものを持っています、それに対してあなたは何ができるんですかと、対等な立場でモノを言えるから。それで手を組める人もいます」
さらに求めたいのは政治を動かす「数」である。
「全国にはすごい数の保護団体が存在しています。それを足したら結構な数、つまり票になります。でも、この業界は横の繋がりがなくて、数の力を発揮できないのです。なぜなら、すぐに意見が割れてしまうから。みんなが無償の愛でやっている。お金にもならないのにこんな大変なことをやるんだったら、自分のやり方でやりたいと思うでしょう。でも、僕は自分のやっているこの事業に対する理解を少しでも広げて、数として成立させたいと思っているんです」
討ち死に覚悟です
まずは拠点のある千葉県で行政と連携しながら、日本で一番動物と暮らしやすい県にするようにしたいと意気込みを語る。
「どこの市長さんとは言えませんが、動物保護に積極的の市と進めている案件があります。採算が取れて評判も良ければ、成功のモデルケースとして他の市長さんのところにも話を持っていって広げていきたい」
だが、この案件一つにしても、来年度からスタートできるまで話を進めるのに10カ月を要した。さかがみ家の初年度の経常損失は3200万円の赤字。今年度は「何とか黒字に持っていきたいと思っていたが、ちょい赤字」。まだ道のりは長いが、最後までやり抜く覚悟は決めている。
「討ち死に覚悟です。僕は何年も前から人生の終わりを見据えて、それまでにできること、やりたいことは何だと考えて50半ばで、テレビ業界から半分足を洗って、この仕事を始めました。あとやれるとしてもせいぜい10年くらいです。その間、大好きな動物たちを一匹でも幸せにできたらいいという思い。自分が生きている間に思い描いていることの7割くらい達成できれば御の字だと思う」
自分の代で夢の全てを叶えることが無理でも、後進につなげられたらいいとも語る。
「うちの社員は若い女性が多いのですが、ペットショップで働いていた子が多いんです。日本では動物好きが働く場がペットショップになっているんですよ。そんな彼女たちのためにも、本当に動物の幸せになるための働き場所をちゃんと残していきたい」