イスラエル軍 ガザ侵攻開始で先陣を切る“世界最凶のブルドーザー”「D9R」の恐るべき実力とは
戦車よりD9R
「理由はガザが世界で有数の人口密集地だからです。そもそも戦車は市街戦が苦手です。さらに、空爆でがれきだらけとなったガザでは、メルカバは自由に動けません。ところが現在のガザは、D9Rにとっては建物の解体現場のような状況です。D9Rはハマスの対戦車兵器にも耐えられるので、がれきを撤去しながら前進できます。もちろん機関銃や擲弾で攻撃することも可能です。D9Rが橋頭堡(きょうとうほ)を作ると、後方の歩兵が周囲を制圧。地区を“面”で制圧するという作戦が実行されるでしょう」(同・軍事ジャーナリスト)
先にD9は武装パレスチナ人が立て籠もる住居を破壊したことを紹介したが、テロリストが潜むビルを壊した“実績”さえあるという。
さらに、現在のD9Rは遠隔操作による無人機も開発されている。もし本格的なガザ侵攻が始まったら、無人機が使われる可能性は充分に考えられる。
「いくらD9Rが高性能でも、ウクライナの最前線に投入したところで意味がありません。ブルドーザーは時速15キロくらいなので、戦車に比べると低速です。ロシア軍に向かって進軍したとして、遠距離からの集中攻撃で簡単に撃滅されるでしょう。今回、イスラエル軍がD9Rを投入するのは市街戦だからです。そして、D9Rの高い性能やこれまでの戦果を考えると、ハマスが苦戦するのは必至でしょう」(同・軍事ジャーナリスト)
“モンスター”も投入か
がれきが撤去され、道路が使えるようになれば、イスラエル軍は市街戦用の独自兵器を投入するかもしれない。例えば「ナグマホン」だ。
「ナグマホンは、戦車の砲塔を撤去し、密閉式の戦闘室を乗せた重装甲歩兵戦闘車です。戦闘室は『犬小屋』と呼ばれ、丸い塔のような形をしています。塔には小さな窓がいくつも取り付けられ、そこから機関銃の銃身が突き出し、周囲にフェンスのような防御装甲が取り付けられているタイプもあります。異様な外観から『モンスター』というあだ名が付けられました。ベースは戦車ですから防御力は極めて高く、ガザ地区の暴徒鎮圧に戦果を挙げてきました」(同・ジャーナリスト)