5代目工藤會の新執行部人事 「死刑回避」で闘争中の野村総裁の意向はどれくらい反映されているのか?

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死刑判決回避のために

 10月20日付で、特定危険指定暴力団・5代目工藤會(本部・北九州市)の新執行部人事が発表された。死刑判決回避をかけて控訴審で争う野村悟総裁(76)、田上不美夫会長(67)の意向はどれくらい反映されているのだろうか?

 人事を紹介する前に、先日行われた福岡高裁での控訴審の内容を振り返っておこう。

 2021年8月の1審判決では、野村総裁が元漁協組合長射殺(1998年)、福岡県警の元警部銃撃(2012年)、看護師刺傷(2013年)、そして歯科医師刺傷(2014年)の4事件の首謀者と断じ、野村総裁に死刑、ナンバー2の田上会長に無期懲役を言い渡していた。

 9月27日に福岡高裁で行われた被告人質問では、野村総裁は無罪を主張したが、一方で田上会長は看護師刺傷と歯科医師刺傷の2つの事件に関して、「傷つけるように指示した」と一転して関与を認めた。

 田上会長は主張をひるがえした理由について、「総裁は父親のような存在」「総裁は被害者の名前すら頭にないだろう」「自分の判断で総裁まで巻き込んでしまって申し訳ない」「何も知らなかったのに死刑になってしまった。本当のことを言おうと思った」と説明した。

理事長が交代

「被告人質問で、野村総裁は工藤會からの脱退を、田上会長はその職を退く意向を表明していましたが、現時点で2人は共にそのポストにとどまっているようです」

 と、担当記者。では10月20日付の人事とはどういったものだったのか。事情に詳しい竹垣悟氏(元山口組系義竜会会長で、現在はNPO法人「五仁會」を主宰)によると、

「合計6つの事件に関与したとして組織犯罪処罰法違反の殺人未遂罪で起訴され、1審で無期懲役判決が下った菊池啓吾理事長(ナンバー3)に代わり、幹事長だった6代目田中組の後藤靖組長が理事長となりました」

 その他については、舎弟頭に長谷川泰三組長(独り親方)、会長補佐に石田組の石田正雄組長、総本部長に池田組の池田和生組長、幹事長に2代目長谷川組の高橋義博組長、理事長補佐は4人で、塩見組の塩見直之組長、山中組の山中政吉組長、6代目林組の影浦壱治組長、緒方組の緒方哲徳組長となっている。

「菊池前理事長は理事長相談役に退いたようです。最高裁まで争うにせよ、判決が確定して刑務所へ行くまでの待機ポストとみられています」(同)

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