海外からも絶賛された「VIVANT」 続編制作は白紙状態、立ちはだかる難題とは何か
最初から国際標準を意識…海外での絶賛につながる
やむを得ないだろう。モンゴルで約2カ月半の長期のロケを行ったが、日本とモンゴルのスタッフは総勢約250人にもなった。通常のドラマの海外ロケと比べ、約4~6倍だ。しかも第1回では迫力満点のカーチェイスがあったし、第3回ではモンゴル軍の戦車まで登場した。どちらも相当な金が掛かったはずである。
視聴者が見過ごしてしまいそうなところにも金を惜しまなかった。通常の1時間ドラマは350~400程度のカット(同じ構図の映像)を積み重ねて構成するが、「VIVANT」は500弱~約600カットもあった。
これは欧米のドラマや映画に匹敵する。カット数が多いほど映像のテンポは速く感じられ、見応えが出る。ただし、カット数が増えるほど金と手間がかかる。
なぜカット数を増やしたかというと、福澤監督が最初から国際標準を意識していたため。「普通につくってもダメだなと。これまでの日本のドラマは国内向けにつくっていた」(ファンミーティングでの福澤監督)。使えば安く仕上げられるCGもほぼ排除した。
それによって予算オーバーとなり、続編の資金調達も簡単ではないわけだが、光も見えている。「VIVANT」はフランスのカンヌで毎年10月中旬に行われる世界最大級のコンテンツ見本市「MIPCOM」で、番組バイヤーたちが自分で買いたいドラマを選ぶ「BUYER‘S AWARD for Japanese Drama 2023」のグランプリに輝いた。バイヤーたちから絶賛された。
2010年のグランプリだった同局「JIN-仁-」(2009年)は、その続編の「JIN-仁-完結編」(2011年)が欧米各国やロシアなど80カ国で放送された。「VIVANT」も海外進出は間違いない。それによって得られる番組販売料は今回の制作費に充足され、さらに続編の資金になるはずだ。
TVerなどの再生回数でも圧勝
一方、「VIVANT」などの夏ドラマの見逃し再生数ランキングが判明した(ビデオリサーチ調べ、7月3日~10月1日)。民放公式テレビ配信サービス「TVer」や、各局が運営する見逃し動画のプラットホームなどの数字を合わせたものだ。こちらも「VIVANT」が圧勝している。
全10回の「VIVANT」は上位8位までを占めた。物語が急展開した回や伏線だった回が上位に並んでいる。※( )内の数字は再生回数
1位:第5回(419万3726回) 警視庁公安部の野崎守(阿部寛・59)が乃木憂助(堺雅人・50)の経歴や別班であることを突き止める
2位:第1回(399万7863回) 表の勤め先である丸菱商事で誤送金事件に巻き込まれた憂助が、金を取り戻すためバルカ共和国に向かう
3位:第6回(387万9533回) 凄腕ハッカーのブルーウォーカーこと太田梨歩(飯沼愛・20)がテントの暗号文を解読
4位:第7回(378万6740回) 憂助ら6人の別班が身分を偽ってテントのノコル(二宮和也・40)たちと接触するが、まさかの事態が発生
5位:第9回(375万1479回) テントのリーダーでノゴーン・ベキこと乃木卓(役所広司・67)が、息子の憂助に地下資源の事業化計画を明かす
6位:最終回(374万5603回) 日本に帰国したベキが、自分と家族をバルカに置き去りにした人物への報復を図る
7位:第4回(372万2575回) 丸菱商事での憂助の同僚・山本巧(迫田孝也・46)が、誤送金事件の黒幕でテントのモニター・山本巧(迫田孝也・46)だと判明
8位:第2回(319万3890回) 憂助、野崎、医師の柚木薫(二階堂ふみ・29)が、バルカ共和国の日本大使館からモンゴルを目指す
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