「失業率は70%」「子どもの20~25%は治療が必要なレベル」 ガザの苦難の実態とは
海の向こうでまた戦争が始まった。イスラエルとハマス――不倶戴天の敵同士の激突で、ガザは死屍累々。「天井のない監獄」と言われる地に住む民は、果たしてどれだけの苦難を強いられているのか。がれきの中を脱出し、水も飲めない……。現地からの緊迫証言である。
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「マサ、元気か。アラーのおかげで生きてるよ」
ボイスメッセージから聞こえるのは疲労困憊(こんぱい)といった様子の男性の声だ。
「でも昨日、死をふたつも経験した。ひとつ目はうちの隣が爆撃された。自分の家もほぼ全壊し、がれきが子どもたちにも降りかかってきた。必死で彼らを抱えて家を出たのだけど、避難している途中にも俺たちに向けて爆撃してきて、周りに死んだ人がたくさんいて、家族も叫びまくっていた」
そしてこう訴える。
「どうやってこの状況を説明していいのかわからない。ここにいるのが信じられない。奇跡なんだよ。インシャッラー、インシャッラー。本当にごめんなさい、なかなか連絡できなくて。でも、インターネット……すべてが困難なんだ。ありがとう、マサ、ありがとう」
徒歩で移動し、夜はコンクリートの床で…
イスラエルからの退避要求に従い、ガザ地区北部から南部へ避難する住民の生の声である。まるで“何か”を覚悟したかのような内容が彼の置かれた状況を物語る。
「このメッセージは、われわれの団体のガザに駐在する現地スタッフから14日に送られてきたものです」
と述べるのは、NGO「パレスチナ子どものキャンペーン」のエルサレム事務所代表・手島正之氏。メッセージにある「マサ」その人である。
「イスラエルがガザを空爆して以来、現地の通信は壊滅的な状況になりました。連絡は1日1度、ボイスメッセージかテキストが送られてくるかどうか。こちらからも送っていますが、なかなか既読になりません。12日からはまったく連絡が取れなくなり、27時間たってようやく届いたのがこの音声です。彼は隣家に空爆が直撃し、自宅が全壊した。がれきに埋もれ、奥さんと子ども2人とやっとの思いでかきわけて脱出し、ようやくガザ中部まで逃げてきました」
現地はがれきの山だ。
「車はガソリンが無いので使えず、また塞がっている道も多い。徒歩で移動しているそうです。夜は空いているアパートなどを借りる。コンクリートの床で、空爆の恐怖におびえながら眠りについています」
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