豊作の秋ドラマ5選 「コタツがない家」ダメ男3人の前で見せる小池栄子の“得意技”に注目

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NHK「大奥 Season2」医療編(火曜午後10時)

 冬ドラマとして放送され、大好評を博した時代劇の続編。徳川幕府下、多くの若い男性が赤面疱瘡(あかづらほうそう)という死病に罹ったため、女性が将軍職などに就き、男女が逆転する物語。

 八代将軍・吉宗(冨永愛・41)の死から約20年。吉宗から赤面の撲滅を託された老中・田沼意次(松下奈緒・38)は、中国の薬物学を学んだ平賀源内(鈴木杏・36)に対し、長崎から蘭学者を連れて来るように命じる。目的はもちろん、赤面対策だ。

 源内は長崎で蘭方医の吾作(村雨辰剛・35)と知り合い、大奥へ連れ帰る。吾作はオランダ人と遊女の間に生まれた混血児で、誠実な男だった。吾作は大奥で青沼と名付けられた。

 青沼は大奥内で人痘接種という治療法を実施した。赤面患者の膿を未感染者に人工的に植え付けることで、ウイルスに対する免疫を獲得させた。まさに蘭学。接種は次々と成功した。

 しかし、田沼と対立する松平定信(安達祐実・42)の甥が接種によって死んでしまった。免疫が出来ず、赤面に罹ってしまったのだ。一方で10代将軍・家治(高田夏帆・27)が、ヒ素を盛られて暗殺される。これも田沼を快く思わない野心家・一橋治済(仲間由紀恵・43)の仕業だった。

 田沼はこれらの凶事の責任を取らされ、大奥から追放される。青沼は打ち首になった。源内も梅毒で亡くなる。治済の息のかかった男たちに襲われ、罹患してしまった。赤面を撲滅しようと身を粉にした3人がいずれもいなくなった。世の理不尽さが嫌というほど表された。

 ベテランの時代劇制作者によると、現代劇では表現しにくい人間の業や機微、世の哀しさなどを描くのが時代劇の役割なのだという。そう考えると、この作品は極上の時代劇にほかならない。よしながふみさんの名作漫画を名手・森下佳子氏が持ち味を損なわずに脚本化している。

 武士の世を描けば時代劇になるわけではない。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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