豊作の秋ドラマ5選 「コタツがない家」ダメ男3人の前で見せる小池栄子の“得意技”に注目
秋ドラマが出揃った。面白い作品が多い。もっとも、プライム帯(午後7時~同11時)だけで17作品もあるから、全て観るのは難しい。そこで絶対お薦めの5作品をご紹介したい。
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日本テレビ「コタツがない家」(水曜午後10時)
ホームドラマの進化形である。頑固オヤジが君臨していたTBS「寺内貫太郎一家」(1974年)から49年、この物語の真ん中には妻で母親の深堀万里江がいる。演じているのは小池栄子(42)である。
家庭内での万里江はしっかり者。仕事も出来て、ウェディングプランニング会社を経営している。一方、吉岡秀隆(53)が演じる夫の悠作はダメ男。漫画家なのだが、仕事はほとんどなく、それに焦らずゲームをして酒を飲む日々。それでいて大口を叩く。
作間龍斗(21)が演じる高校3年生の1人息子、順基もやっぱりダメ男。陰気な性格なのにアイドルグループのオーディションを受け、落ちてシュンとなる。それなのに「5年後、見てろよって感じ」と大言壮語する。この辺は悠作と似ている。
一家はこの3人だが、さらに万里江の実父・山神達男(小林薫・72)が家に転がり込んでくる。万里江の母親・貝田清美(高橋惠子・68)に捨てられ、熟年離婚した。帰る家もない。こちらもダメ男だ。1度済んだことを、何年経ってもネチネチと口にする悪いクセがある。
達男と清美の離婚前、万里江たちが遊びに行くと、達男はいつも清美を責める話題を口にした。「有田焼の壺を割った話とボートから落とされた話とグアムで迷子になった話」(順基)、「あと勝手に医療保険を解約した話」(万里江)、「この4つは鉄板だよね」(順基)。
達男はギャグのつもりだったようだが、この話が出るたび、清美は吐き気がしたという。これでは離婚される。
小池の小気味よい睨みと名優2人が演じるダメ男
この3人のダメ男を万里江が背負う物語だ。小池は民放GP帯(午後7時~11時)の連続ドラマは初主演だが、危なげが全くない。むしろ、万里江役は小池以外では演じるのが難しかったのではないか。
このドラマのポイントの1つが万里江の睨みにあるからだ。ダメ男たちがバカを言ったり、やったりするたび、万里江はじろりと睨む。これが小気味良い。睨む演技は小池の得意技である。
小林と吉岡のダメ男ぶりもいい。情けない男なのだが、観る側にとって軽蔑の対象にはならず、むしろ愛らしい。名優2人の演技力が高いからだ。
同じ日テレの「俺の話は長い」(2019年)で向田邦子賞を獲った金子茂樹氏(48)による脚本が冴え渡っている。リアリティーがあるのに笑えるセリフがちりばめられている。
達男と清美は見合い結婚だった。
「どうして女房に捨てられちゃったんだろうねぇ」(達男)
「ばあちゃん、会った初日から性格が全然会わなかったって言ってたよ」(順基)
「そう……」(達男)
タイトルの「コタツがない家」の意味は「一家団欒がない」ということではないか。
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