中国政府の“イスラエルに残る自国民”への対応が物議 「一帯一路」の成果ばかり宣伝している場合ではない

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国威発揚にばかり気をとられる中国政府の体質

 軍事面での躍進に自信を持つようになったからだろうか、中国政府は緊迫する中東情勢についても積極的に発言するようになっている。

 習氏は19日、イスラエルおよびパレスチナのガザ自治区を実効支配するイスラム組織ハマスの双方に早期停戦を呼びかけた。今年3月にサウジアラビアとイランの国交正常化で仲介に成功した中国が、中東地域での影響力を行使し始めている。

 だが、その陰で「不都合な真実」も明らかになっている。

 独ドイチェ・ヴェレ(中国語版)は17日、「イスラエルに残る自国民に対して商用便での帰国を呼びかけた中国政府の対応が物議を醸している」と報じた。自国民を退避で各国が様々な手段を講じているにもかかわらず、中国政府が「救いの手」を差し伸べないことについて、現地の中国人から一斉に批判の声が上がっているというのだ。

 国威発揚にばかり気をとられ、困難に陥った一般の人々を顧みようとしない中国政府の体質が改めて浮き彫りになった形だが、果たしてこのままでいいのだろうか。

 中国の将来を担う若者の間で、祖国を見限る動きが出ているのが気になるところだ。

「勤勉な亡国の王」は習氏を想起させる?

 10月3日付米ニューヨーク・タイムズは「政治的な抑圧、暗い経済見通し、過酷な労働環境から逃れるため、システムエンジニアを始め高学歴の若者が先進国に移住するケースが急増している」と報じた。

 若者の脱出先は先進国にとどまらない。香港のニュースサイト「香港01」は14日、「景気が減速する中、中国の若者の中ではアフリカへの出稼ぎがトレンドになっている」とする記事を掲載した。語学を専攻する学生を除き、アフリカで働くという選択肢は一般的でなかったが、若者の失業率が記録的な水準に達している状況を受け、アフリカの中小企業で働く若者も増えているという。

 中国では今、明王朝最後の皇帝(崇禎帝)に関する歴史書の回収処分が話題を呼んでいる。2016年に北京の出版社が刊行した書籍に、別の出版社が新タイトル「崇禎:勤政的亡国君(勤勉な亡国の皇帝)」を付けて再刊行したものだ。

 回収理由は「印刷の問題」とされているが、この新タイトルや帯に書かれた「悪手が悪手を呼び、勤勉になればなるほど国は亡びる!」とのキャッチフレーズなどが「習氏を連想させる」と当局に判断されたという見方もある。

 隆盛期に断行した海外大遠征が、民衆の不満を招いて王朝崩壊の一因となった明だが、現在の中国も同じ道を歩むことになってしまうのだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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