中国政府の“イスラエルに残る自国民”への対応が物議 「一帯一路」の成果ばかり宣伝している場合ではない

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曲がり角を迎えつつある「一帯一路」

「盛大な集会だった。多くの商業計画を締結することができた」

 中国の王毅外相は10月18日夜、17日から北京で開催していた「一帯一路」に関する国際フォーラムを終えた後、記者会見でこのように述べた。

 一帯一路とは、習近平国家主席が2013年に提唱した広域経済圏構想のことだ。「一帯」は中国から中央アジアを経由して欧州につながる陸路を、「一路」は南シナ海やインド洋を通って欧州に向かう海路を指す。

 中国政府は現在、一帯一路の対象をアフリカや南米地域まで広げており、インフラ投資などを通じて親中国圏の拡大に躍起になっている。

 中国国務院新聞弁公室が10日に発表した一帯一路に関する白書 では、130カ国以上が参加し、4000億ドル(約60兆円)以上の投資と2兆ドル(約300兆円)以上の貿易を牽引とその成果が強調されていた。

 今回(第3回)のフォーラムは、習氏の提唱から10年が経過した節目の年に開催された。エネルギー関連を中心に多くの商談がまとまったが、首脳級が参加した国の数は前回(2019年)の37から24に減少した。

 習氏が18日の基調講演で「参加国とともに量から質への転換を目指す」と強調したように、一帯一路が曲がり角を迎えつつあることが背景にある。

「一帯一路を活用して海外に軍事拠点」との指摘も

 最大の問題は、融資を受けた参加国の債務が膨れ上がっていることだ。

 前述の白書は「参加国は中国輸出入銀行に対し、計3000億ドル(約45兆円)以上の債務を負っている」としているが、参加国の債務総額は8000億ドル(約120兆円)に上るとの指摘もある(10月10日付時事通信)。中国が貸し付けた資金も、2018年半ばまでに1000億ドル(約15兆円)以上が不良債権化したとの推計もある(10月16日付東京新聞)。

 かつてのような「大盤振る舞い」ができなくなり、中国の影響力が低下したのは事実だが、一帯一路をテコに国際社会でのプレゼンスを拡大させたことは間違いない。

 アフリカ向けの大規模融資のおかげで、国連における中国の影響力は強まった。西側諸国が香港や新疆ウイグル自治区での人権侵害を国連で問題視しても、アフリカの多くの国々が中国政府を擁護する立場を示す光景が日常化している。

「中国が一帯一路を活用して海外に軍事拠点を構築している」との指摘も出ている。

 米シンクタンクの民主主義防衛基金(FDD)は9月2日に公表した報告書で危機感を露わにした。中国は2017年に東アフリカのジブチに人民解放軍の海軍基地を構築し、今年完工を目標にカンボジアのリアム海軍基地に人民解放軍が駐留する秘密海軍基地を建設中だという。さらに、パキスタンやケニア、アルゼンチンなどでも宇宙・衛星関連の作戦を支援する遠隔制御基地を運営し、シンガポールやインドネシア、タンザニアなどでも航海拠点の設置を打診中とされている。

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