一人勝ち「ポケトーク」は今やタクシー運転手の必需品 開発会社が語る“無料版ネット翻訳”との違い

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翻訳の水準

「自動翻訳サービスやその関連ビジネスは、非英語圏の企業が開発して成功を収めたケースが少なくないのです。例えば、文法チェックで有名な『Grammarly(グラマリー)』は3人のウクライナ人によって開発されました。翻訳ツールの『DeepL(ディープエル)』を開発・販売しているのはドイツの企業です。英語は世界の公用語ですから、英語圏で設立された企業は外国でもコミュニケーション手段に困らないのでしょう。そのため、翻訳に対する切実なニーズに欠けてしまうのではないでしょうか」(同・若山氏)

「重訳」の問題も見過ごせない。例えば、中国語の書籍を翻訳する場合、原文である中国語を日本語に翻訳するのが本筋だ。

 一方、中国語の書籍が英語に翻訳され、その英語版を元に日本語へ翻訳することを重訳という。重訳は原文のニュアンスを反映できなかったり、誤訳が生じたりする弊害が指摘されている。

「Google翻訳をはじめとする自動翻訳サービスは効率を最優先にしているため、多くの言語で英語を介した重訳が行われています。中国語を入力すると、まず英語に翻訳され、その英語を日本語に翻訳して表示するのです。一方、ポケトークは、中国語をダイレクトに日本語に翻訳します。ポケトークは74言語で音声とテキスト、11言語でテキストのみ、合計85言語に対応しています。ドイツ語を中国語、ポルトガル語を韓国語など、英語を介さずに翻訳しますから、その組み合わせは85×84=7140通りになります。当然ながら、システム開発のことだけを考えれば、弊社のやり方は非効率的でしょう。ただし、重訳をしないため、翻訳のクオリティは専門家の折り紙付きです」(同・若山氏)

ブルーオーシャン市場

 Google翻訳に代表されるような無料版で充分という人もいるだろう。だが、有料版のトップランナーであるポケトークは無料版とは違って翻訳の精度が高く、カメラで看板やメニューを映せば即座に翻訳してくれるモデルも発売されている。

 有料版ならでは、というメリットは多い。そもそも翻訳の専門機を持ち歩いたほうが、スマホのアプリを使うより便利だという。

「海外旅行を楽しんでいる時に翻訳の必要性を感じたとします。スマホを取り出し、アプリを検索、起動させる手間は意外に大変なのです。特に店員さんを待たせたりしていると、心理的なプレッシャーも感じます。一方、専門機は取り出せばすぐに使うことができます。何気ない違いのように思う方もいらっしゃるでしょうが、この差は大きいのです」(同・若山氏)

 とはいえ、ポケトークの開発で手に入れた技術的な蓄積やノウハウを利用し、ポケトーク社はアプリやソフトウェアの開発にも力を入れている。

 2023年3月には「ポケトーク for BUSINESS 同時通訳」をリリース。さらに「ポケトーク for BUSINESS カンファレンス」の試験版が話題になっており、今冬にも提供が開始される予定だ。

「『カンファレンス』のベータ版を発表すると東京都からも問い合わせがあり、私たちも驚きました。AI翻訳は専用機もアプリも競争が激化しており、いわゆる利潤の少ない“レッドオーシャン市場”のように見える方もおられるでしょう。しかし、ポケトークの欧米における売上は、まさに右肩上がりです。『カンファレンス』を筆頭に、アプリやソフトウェアも大きなニーズがあることが確認できました。まだまだ充分に伸びしろはあり、成長の余地が大きい“ブルーオーシャン市場”だと考えています」(同・若山氏)

デイリー新潮編集部

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